2006年02月21日

クラッシュ

Crash2.jpg
『ミリオンダラー・ベイビー』の脚本を書いたポール・ハギスが製作・脚本・初監督を務めた、混沌とした人種の坩堝であるLAを舞台にした人種問題を提起する人間ドラマでありサスペンスでもある群像劇。

群像劇である為に、登場するキャラクターは全てが主演で助演。
それにしても豪華なキャスティングである。
オスカーで助演男優賞ノミネートのマット・ディロンの演技を久しぶりで観られるのも嬉しいし、ドン・チードル、テレンス・ハワードは勿論、ブレンダン・フレイザーにサンドラ・ブロックなどは、新境地の役どころといってもいいかもしれない。

しかしながら、観始めは何だかアザトサもあり、「こんな救いようのない話を、また延々見せられるのか!?」っと正直胸クソが悪くなりもしたけれど・・・
う〜〜〜ん、やられた、良かった!何度も涙が溢れました・・・MAYBE TOMORROWるんるん

クリスマス間近のロサンゼルス郊外、深夜のハイウェイで起こったクラッシュ事故。
その事故に巻き込まれた黒人刑事グラハム(ドン・チードル)と同僚で恋人のプエルトリコ系リア(ジェニファー・エスポジート)。
リアは追突してきた中国系の女性に口汚く「このメキシコ女」と罵られる。
そして事故現場の横にはアフリカ系アメリカ人の死体があり、その捜査にグラハムは携わっていくことになるのだが・・・。
物語はその前日へと遡り・・・

CRASH5.jpg強盗や人種的中傷に疑心暗鬼になっているペルシャ人の雑貨店を営む父、ファラット(ショーン・トーブ)と娘。
その雑貨店の鍵を直しにに来て、ファラットの差別意識と言葉の行き違いから恨みを受けるヒスパニック系のダニエル(マイケル・ベーニャ)と、その家族。
黒人差別に憤慨するアフリカ系の若いごろつき、アントニー(ルダクリス)とピーター(ラレンズ・テイト)。CRASH4.jpg白人の地方検事リック(ブレンダン・フレイザー)と、有色人種を憎悪する妻ジーン(サンドラ・ブロック)。
黒人に異常な差別意識を持つ白人警官ライアン(マット・ディロン)と、そのライアンに嫌悪感を抱く部下ハンセン(ライアン・フィリップ)。
差別主義者ライアン巡査から言われのない、セクハラまがいの取調べを受ける、映画監督である黒人のキャメロン・セイヤー(テレンス・ハワード)と妻クリスティン(タンディ・ニュートン)。
そんな、それぞれに人種の違ったアメリカ人たちの人生が、一日に起きるアクシデントで重なり合い、思わぬ方向へ転がっていく。

冒頭に、ドン・チードルが「人は皆、実はぶつかりたがっているんだ」と呟くシーンがあり、「あれま、もうこの映画のテーマをお呟きになって・・・あざとい!」などと思ってしまうわけですが、(^^;
いやがうえにも引き込まれる展開。
こんなに見事に描かれてまとまっていく群像劇の味わいは初めてかもしれない。
とにかく最初は誰をとっても正直、ヤな奴ばかりで・・・・
取り分けマット・ディロンはさすが!黒人の妻、タンディ・ニュートンを取り調べるシーンなど、
思わず『スタンドアップ』を思い出してしまって、タンディさんが、これまた喚き散らすは夫をなじるは・・・
それゆえにその後の展開には、唖然として涙そうそう。。。CRASH3.jpgペルシャ人と鍵屋のエピソードにも心奪われます。二人に起きる諍いと奇跡に舞い降りる天使は、人種と偏見の中で明日を担う若き娘たち、実は二人であるということ・・。
一つのアクシデントから、、それはもう人種という見事に統一されたテーマで紡がれる、いろいろなエピソード。
決して誰もが希望に向かっていく訳ではないけれど・・・
複雑な人種の数に比べて、人間の心の裏表は決してそれ程複雑ではないこと。
それが明日へのかすかな希望ではないか?と問いかけるようにラストシーンとエンディングで流れる、
STEREOPHONICSの“MAYBE TOMORROW”♪いやもう本当に沁みました。。。

今回は監督も務めるポール・ハギスの脚本は本当に見事で、
『ミリオンダラー・ベイビー』も素晴らしかったけれど、私は『クラッシュ』の方がかなり好きだな。
いよいよ又、獲っても獲らなくてもいいものはイイけど・・・
でもやっぱり・・・・オスカーが楽しみになってきました。(笑)

ところで、STEREOPHONICSの“MAYBE TOMORROW”は、最近どっかで聴いたなぁと思ったけど、そういえば『アパートメント』のリメイク作品『ホワイト・ライズ』でも使われていましたっけ・・・。

それとラスト前に流れる女性ヴォーカリストの曲はBird York の“IN THE DEEP”。
このバード・ヨークって、映画の中でも婦人警官役をしていたらしくキャスリン・ヨークとしてクレジットされてましたが(覚えがない ^^;)、この曲、予告編で流れていた時点でも素晴らしく感情を揺さぶられる静かな歌声が耳に残っていますねるんるん
Crash7.jpg
Kathleen York

posted by ラクサナ at 18:44 | Comment(16) | TrackBack(5) | 2006年 2月映画鑑賞作品
この記事へのコメント
いやいやこれ・・仰るとおり最初はあまり入り込めない部分もあったりするんですが、中盤からググっと来ますよね〜 とりわけあの鍵屋の可愛いお嬢さんのシーンからお目目パッチリ! 全部見終わってからもう一度最初から観たくなりましたもの!! なんだか伏線を一杯見落としているようで・・。音楽も良かったですよね〜劇場を出るときあんまり興奮してパンフ買い忘れたので、詳細が何もわからなくて・・。たぶんそれもあるしでもう一度行くと思います。
アカデミー賞は”脚本賞”は行くんじゃないでしょうかね・・
Posted by マダムS at 2006年02月22日 17:49
昨年から予告を観ていて、ず〜〜〜と楽しみにしていた映画でしたの。ホンに良い映画でありました。わたしももう一度観たいのですね。でも現実には行った試しないのです...。
musicも良かったですよね。
わたしも「ミリオン・ダラー〜」よりこっちだな脚本。
Posted by margot2005 at 2006年02月22日 23:53
[Em137]
>マダムSさん
私も、もう一度観たいです!
私も見落とした伏線数知れず!?
でも、これだけの群像劇で、結構判りやすく混乱は皆無だったことにも感謝感激!やはり素晴らしい脚本の勝利でしょうか。
最近パンフは全然購入しない私ですが、サントラはちょっと欲しかったりして[Em146]
インディーズで頑張って、最近は自身で初監督も果たしたマット・ディロンの演技もお涙ものでした。
それにしても、鍵屋のお嬢ちゃんは可愛かったですね!

>margotさん
もう〜全く私も観に行った試し無しの奴なんですが、DVDでの再見はお約束できますです!
因みに『ミリオンダラー・・』の方は、素晴らしい映画でも二度と観たくない作品BEST1でもあります。(笑;)
それにしてもシリアスな役も素晴らしい俳優ぷっりなだけにブレンダン君の次回作(何だろ?)が楽しみでもありますよね。




Posted by ラクサナ at 2006年02月23日 01:32
こんばんは、
私も見てきました。
ベスト監督にもノミネートされているけど、
いやぁ〜長年培われた実績があるせいか、脚本の素晴らしさが光りますよねっ♪
見始めて、絶望的になって、私もやれやれとおもっていたけど、
途中も涙が溢れたりして、上手いなぁ〜と見終わった後、うなっちゃいました!!
マット・デロンって、今まで、余り認識していなかったけど、
今回はすっかり印象に残りました。
テレンス・ハワードも、なかなかハンサムだし・・・。
さすがラクサナさん、音楽に詳しいですねっ♪
DVDになったら、もう一度聞きたい!

今日は有り難うございましたm(_ _)m
本当に嬉しかったです*(^-^)*
Posted by 紫の上 at 2006年02月23日 21:49
どこから話していいか難しいですけど、どこを取り出しても心がジンとする作品でしたね。
鍵屋と雑貨屋のエピソードがイチバンかな。ただ、あれも鍵屋側からすればトラウマになりそうなくらいの出来事ですよね。あの瞬間は、身が縮む思いしました。
可哀想なのがドン・チードル演じる刑事ですね。あんな仕打ちってないですよねぇ。
ワルだからって何も悲劇の結末を迎えるわけじゃない、でも、優しいからって報われるわけじゃない...。たくさんの想いが詰まった作品でした。
Posted by アンパンまん at 2006年02月23日 23:24
[Em139]
>紫の上さん
ポール・ハギス、本当に上手いですよね〜!
彼の次回作、又脚本家としてクリント・イーストウッド監督と組む『FLAGS OF OUR FATHERS(父親たちの星条旗)』が、硫黄島の米兵の物語のようで、これまた気になりますよね!
奥目のマット・ディロン、デビューの頃から憎からず思っておりますが(^^;『最高の恋人』の彼が非常に[Em137]でございます。^^
いえいえ喜んで頂けて私も嬉しいです。

>アンパンまんさん
>ワルだからって何も悲劇の結末を迎えるわけじゃない、でも、優しいからって報われるわけじゃない...。

ん〜〜全くですね。登場する主人公たちが、冒頭と終盤では違う顔を見せてくる人間の本性の描き方も素晴らしかったです。
取り分け、不幸に陥ってしまったのが、最初から優しさを感じる二人であったことは、胸が痛みました。[Em144]
ドン・チードルは、家族の中でも、人種としても立場が無くなってしまったみたいで、本当に気の毒でしたよね〜。


Posted by ラクサナ at 2006年02月25日 01:28
昨年でしたか、イーストウッドが来日して、石原都知事を訪問したのは・・・。
その時に硫黄島を舞台にした映画を作ると聞きました。
それが「父親たちの星条旗」で、脚本がポール・ハギスとは、絶対期待してしまいます。
今から楽しみですねぇ〜!
あ、そう言えば、日本人を主人公にした「硫黄島からの手紙」も制作するとか聞いたような?
「最高の恋人」は大分前だけど、見ました。え?その時の彼がマット・ディロンでしたか。
なかなか素敵だったと思いました。
ラクサナさんは彼のデビュー当時から、憎からず思っていたんですねっ♪
Posted by 紫の上 at 2006年02月26日 23:16
[Em139]
紫の上さん
クリント・イーストウッド、最初は制作のみに関わる予定だった日本映画の『硫黄島からの手紙』の監督も自ら決意したようですよね。
両原作を最近購入して、先日『硫黄島から・・』の原作「玉砕総指揮官の絵手紙」を読み終えましたが、栗林陸軍大尉の若き日のアメリカ留学地から、息子の太郎君へ宛てた日常を描いた絵手紙。それがユーモアさえ感じる素晴らしい内容で綴られており、文才にも絵画にも又音楽にも精通している栗林大尉の、父親として、人間としての温かさに感動するも、後に皮肉にも留学地アメリカを敵にして、玉砕指揮官となる硫黄島から末の娘さんに宛てた手紙に涙が止まりませんでした。
日本映画をイーストウッドが監督するのも驚きですが、アメリカの視点で描かれた「父親たちの星条旗」の合わせ鏡となる日本の視点で描かれる作品を、彼がどうメガホンを取るのか興味以上のものを感じますね。

マット・ディロンの『最高の恋人』、やはりご覧になっていたんですね!(嬉)
彼の今後も楽しみです[Em146]
Posted by ラクサナ at 2006年02月27日 18:26
ちょっとご無沙汰でした。
昨日のアカデミー賞授賞式で見たマット・ディロンは素敵でしたねっ♪
さすがスターだと思いました。
そうそう「父親たちの星条旗」では、最近リースの陰に隠れていた、ライアン・フィリップが主役だと聞きました。彼にも頑張って欲しいです!
ポール・ハギスさん、脚本賞もゲットしたし、本当に2作品が、ますます楽しみになってきました。
ラクサナさん、「硫黄島からの〜〜」の原作も読まれて、準備万端ですねっ♪
私も映画の封切り前までに読んでみたくなりました。
Posted by 紫の上 at 2006年03月07日 22:48
[Em139]紫の上さん
マットは、ケヴィン・クライン主演のコメディ『イン&アウト』で、オスカーの壇上に立っているシーンがありましたけど(笑)、本物のアカデミー賞に列席する姿も素敵でしたね[Em137]

「父親たちの星条旗」、ライアン・フィリップが主人公であるジョン・ブラッドリーの若き兵士役を演じるようで、ホント楽しみです!他にもジェイミー・ベル君やポール・ウォーカーも出演するようだし。
日本版の原作「玉砕指揮官の絵手紙」は、本当に栗林大尉の絵手紙が中心の本で、あっという間に読めちゃうし、直筆の手紙も載ってますのでおススメですよ。^^
Posted by ラクサナ at 2006年03月08日 10:28
この映画と『ブロークバックマウンテン』近場では三宮の映画館しか上映してなくて、早朝からせっせこ電車乗り継いで行かなくちゃならないんですが、一日で2本観れるんでどうしようかな〜って迷ってます。
ズバリ、それでも観に行った方がいいでしょうか!?
それともレンタル待ちでも充分??
Posted by みはまま at 2006年03月22日 17:54
[Em139]みはままさん
ひゃ〜その2本立て、結構観に行くの大変でしょうか!?
いや〜遠慮なく言っちゃいますけど・・・
観てきて下さい・・できれば・・絶対に!(^^;
『クラッシュ』の幾つもの人間の人生が重なり合う究極のドラマには、本当に素晴らしくって感極まりましたし・・・
まだレビューはアップしてないんですが、先日観た『ブロークバック・マウンテン』も、本当に素晴らしい愛の物語で、ブロークバックの山々、ヒースとジェイクがソコにいる壮大で美しい風景無くしては語れない物語だと思いますので、是非大きなスクリーンで観てほしいです!
レンタルまで待っては、両作品共後悔する作品だと思います・・・もしお気に召さなかったら、今度会った時、一杯おごりますからね、ねねね・・・!(笑;)
わっ、でも2本続けてでは疲れるかもね・・・結構二作品とも余韻を引きずるんですよ〜〜w!(^_^.)
Posted by ラクサナ at 2006年03月22日 18:30
「ブロークバック」と「クラッシュ」は、
ずっと引きずって行く作品ですね!
「クラッシュ」は、出だしの不快感を
いとも鮮やかに裏切ってくれて、人間て、いいものなんだな。と思わせてくれるじゃないですか〜〜いいですよね。
特に、マット・ディロンのエピソードは、
あのマット・ディロンが演じてるからこそ
(ご贔屓さんだから)というわけでもないんですが、胸打ちますよね!
ただ、サンドラ・ブロックのキャラが、「フライトプラン」のジョディーフォスターと、かぶって、白人女性の被害者意識の傲慢さが、
最後まで、引っかかっていました(;;)
まあ、それは、些細なことですが・・(笑)
Posted by キウイ at 2006年04月09日 17:16
[Em139]キウイさん
お久しぶりです[Em146]
サンドラ・ブロック!まさしく!(笑)
んでも、あーいった脇の、一見ヤな女風は似合いますよね〜彼女。。。(爆;)
ひゃ〜〜マット・ディロンのエピソード、特に父親との関係あってのくだりは、私も胸に応えました。オスカーはノミネートに留まったけど嬉しかったです[Em137]
この作品、本当にもう一度観たいっ!^^
Posted by ラクサナ at 2006年04月10日 23:04
お邪魔します☆
私の住んでいる地方にもようやく上陸してくれましたので、やっと見る事ができました。
皆さん、絶賛しておられる中、恐る恐る書きますが、私にとっては、これはあくまでも 「群像劇」の1作品だと思いました。あれだけの偶然が短い時間に重なりあうことはリアリティからかけ離れていると思いますので、ラストに雪を降らせたことで、「この一連の出来事は奇跡なんだよ」 という意味でLAに雪を降らせたのかなと思いました。冬とはいえ通常、LAで雪は降りませんからね。群像劇としては面白かったですよ。今年のオスカーは社会派の作品がノミネートされていたので、消去法からいって残ったのがこれだったのかな?と思ったのが正直な感想です。
Posted by mei at 2006年05月05日 01:46
[Em139]meiさん
ご覧になられたんですね〜。
しかし、イマイチお気に召さなかったのは、リアリティの点でしょうか・・。
私はそこからかけ離れている故に面白い、この作品が好きなので、人それぞれですよね。(笑;)
LAの雪は奇跡を示唆していると私も思いますが、そういえば『マグノリア』も、トンでもない異常気象をやっちゃってましたよね。これから異常気象は群像劇のお約束になるかも!?(^^;b
Posted by ラクサナ at 2006年05月05日 22:56
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