2006年05月08日

ぼくを葬る

LE TEMPS QUI RESTE-3.jpg
フランソワ・オゾン監督の『まぼろし』に続く“死”をテーマにした3部作の二作目。
今回は、主人公自身の死をテーマに描かれた作品。

このチラシは随分前から目にしていましたが・・・
まるで女性の肌かと見間違うかのごとく、ベビーを傍らに横たわる主演のメルビル・プポーの裸身が、何と美しいことかぴかぴか(新しい)

仏語原題は『LE TEMPS QUI RESTE(残っている時間)』、英語題は『TIME TO LEAVE(去る時間)』。
そしてこの邦題の『ぼくをる』は、“ぼくをおくる”と読ませる・・・
なかなか印象的な邦題に、チラシの魅力も相俟って、内容はともかくもクラクラしそうです・・・。(^^;

余命3ヵ月_。
あなたには何が残せますか?


LE TEMPS QUI RESTE-1.jpgパリで売り出し中のファッション・フォトグラファーとして忙しい日々を送っていたロマン(メルヴィル・プポー)は、仕事中に倒れ病院で検査を受けるが、医師から末期がんで余命幾ばくもないことを告知される。
一縷の望みだけの為の化学療法を受けることを拒否したロマンは、家族にも恋人にも病気のことを告げず、ただ唯一、祖母のローラ(ジャンヌ・モロー)には真実を話し、同棲中の恋人サシャ(クリスチャン・センゲワルト)には、心変わりをよそおい別れを告げる。



これがオゾン監督作としては案外定石どおりの展開で・・・
勿論主人公であるロマンが同性愛者であったり、旅先でとんでもなく都合のいいヴァレリア・ブルーニ・テデスキ演じる女性の申し出があったりするが、他の作品よりも、すんなりと感情移入できやすい話になっていて、ちょいと驚く。
LE TEMPS QUI RESTE.jpgそして何よりも、さすがオゾン監督のキャスティング!
主演のメルヴィル・プポーが素晴らしく・・・彼は入院する訳でもなく病気が進んでいく様には、相当なダイエットの演技を要求されたと思うが、やせ細っていく姿と、苦しみから徐々に自分の死を受け入れていく表情までを、見事に演じ、魅せきっている。
そして普通なら年老いた祖母にこそ知らせるべきではないことを、祖母は余命が少なく自分と同じだからと告白するロマン。(爆;)でもこのオバアチャンが過去、かなり自己チューにして開放的な生き方をしてきた辺りに、ロマンが告白の相手に祖母を選んだことに説得力があり、それがジャンヌ・モローである故なおさら・・・この二人のシーンを印象深いものにしている。


LE TEMPS QUI RESTE-2.jpg死はとてもパーソナルなものであるということに対して、個人主義、フランスの若き才能あるフォトグラファーという設定も非常に効いているが・・・
ロマンが祖母以外の誰にも告げず、残された時間を自分だけのために費やすという行為は、一見強い意志を持った人間のようにも見えるけれど、とても我がままなことで、死と言うものに直面した時の人間の弱さをとても表していると思う。
彼は家族や自分の周囲のモロモロの人たちの慰めや助言など、同情は受けたくないというより、自分の残された時間の中で、それらに対応する時間、今の自分にとって非常にしんどい、そんな時間を持ちたくなかったのだろう。
時おり自分の少年時代の姿を回想するシーン。
いつの頃か仲が良すぎた為か、折り合いが悪くなった姉からの手紙を読んで、返事の電話をそっと姉の側でするシーン。
その姉や家族、見知らぬ人たちをカメラに収めるシーン・・・等々、彼なりの決別の仕方にコチラも涙。。。
そしてラストに至っては、やはりオゾン監督ですわ、海持ってきました!^^
しかし、この海辺での風景とロマンの表情がとても素晴らしいのです。
オゾン監督作の中でも、海は見る者のその状況で、いろんな表情を魅せてくれますが・・・
今回の海は満ちて引いてゆく・・・生命力の強さや神秘的な美しさに溢れていて、ラストに見せるロマンの表情にも癒されます。
っと言うことで、この作品はオゾン監督自身の理想的な死を迎えるまでの時間を描いているのだと思う。
私自身もロマンの立場であれば、こうありたいと願うかも・・・。

ところでオゾン監督の死についての3部作。
『まぼろし』『ぼくを葬る』に続いて第三章は如何なりますことか?
噂によると次回は“子どもの死”を描くことになるらしいのですが・・・・
ん〜〜〜〜〜テーマから、楽しみ!っとも言い難く・・・お手柔らかに願いたいものです。
posted by ラクサナ at 18:41 | Comment(14) | TrackBack(7) | 2006年 5月映画鑑賞作品
この記事へのコメント
試写会で見ました。
本人の希望はわかるけど、残された家族や恋人の気持ちも考えて欲しいなって思いました。見ようによっては、究極の自己中。
だれしも理想はね、春の頃桜の木の下でとか、この映画のようならいいですけど、医療関係者のはしくれとしては、実際は大変なのよ。あくまで理想よ、理想と、話に乗れなかったです。
プポーって、横顔はあまりよくないけど、正面は二枚目ですねえ。もう4度も来日していて、今回は地下鉄に乗ってパンダも見に行ったそうな。
↓で、インタビュー画像が見られます。
http://www.showtime.jp/cinema/bokuoku/
Posted by MACHI at 2006年05月11日 09:25
こんにちはー。
オゾン作品で涙したのはたぶん初めてですー。
GWにはたっくさんの映画を観ましたが、これが一番心に沁みました♪
基本的に自己チューな私は、みるみるうちにロマンの心情にハマっちゃいました。
(最初はカンジの悪い業界人って思ったのに・・・)
祖母とのシーンもラストシーンも素晴らしかったですよね。
Posted by かえる at 2006年05月11日 13:11
これはかなり見たいのだけど・・・・やっぱここ最近は初期の短編のような映画をつくってほしいですわーーー・・・「ホームドラマ」とか「海を見る」だっけ??げっ!!と思うようなやつ・・・・。とりあえずDVD待ちです。
Posted by ドロップ at 2006年05月11日 16:29
ラクサナさん!ご覧になったのですね!この作品わたくし感動いたしましたわ。主人公の描き方が素晴らしかったです。basan役のジャンヌ・モローの存在も大きかったですね。
オゾン映画の中で一番!に値する勢いの作品でしたわたしの中では...
「スイミング・プール」もスッゴイ良かったですが...これとはテーマが違ってますので...
前作「二人の5つの分かれ路」は今イチでしたが、又またオゾンさんの次の作品に期待しようと思っておりますぅ!
Posted by margot2005 at 2006年05月11日 22:46
[Em150]MACHIさん
全くでございます。[Em140];
本人が死を受け入れる時間は、家族や恋人にとっても大事な人を失うことを受け入れる大事な時間なのだと思うのですが・・・彼はそれを一切与えずに去るわけですものね〜。あくまでも映画の上での話しとは思いますが、主演のプポーの魅力にドップリ浸ってしまいましたわ〜わたくし!(笑)
他にも出演作を見ているはずなのに覚えていないんですけどね。^^インタヴュー画像有難うございます。普段も素敵そうだけど、スクリーンでの彼が見せるハッとするほどの美しさがタマリマセンですね〜ハイ!^^

[Em150]かえるさん
TB有難うございます!

>オゾン作品で涙したのはたぶん初めてですー。
いや〜そういえば私もそうかも!
『まぼろし』では、涙までは出しませんでした〜私。
そうなんですよね、自己中とは判っていても、彼なりの内に秘めた弱さや優しさに私もやられてしまったのでございます。

[Em150]ドロップさん
過去、辛辣だったり理解不能の部分が多かった監督の作品が最近何だか皆さんドンドンまるくなって来て、非常に感情移入しやすくなってきているように感じるのですが、嬉しい反面、ちょっと寂しい気もしますよね。まるくなるのは年齢のせい!?(^^;
オゾン監督作、その初期の辺りの作品にある、げっ!っとして何かブッと笑えるようなブラックにして変態感覚なものが最近見られませんよね〜。
でもコレはDVDで是非ご堪能くださいませ。
プポー君も恋人役の彼も、とーっても美しゅうございまして、監督のその辺りの趣味の良さに感嘆致しましたですよ。^^b
Posted by ラクサナ at 2006年05月11日 23:45
[Em150]margotさん
王妃!ひゃ〜ん、良かったですよね!
このメルビル・プポー、私もホント気に入ったでございます[Em137]
オゾン監督って、やっぱり男を見る目が違うと言うか・・・お見事なキャスティングでした。ジャンヌ・モローとのシーンも素敵でしたね!余談ながら寝るときは裸に化粧とネックレスも忘れずに・・・(笑)
前作「二人の5つの分かれ路」は、王妃さま始め皆様の書評もイマイチなんで、DVDになっても未だ手が出せずにいる私です。(^^;一週間レンタルになったら見ようかなっと![Em140]
Posted by ラクサナ at 2006年05月11日 23:55
予告編で、主演俳優が美形だし、カメラマンと言うことで、
俄然見たくなって、見てきましたが、見て正解でした。
最近見た作品では一番心に染みました。

この作品は、オゾン監督の「死の美学」ですねぇ〜!
ロマンが祖母のジャンヌ・モローにだけ打ち明けた気持ちは良く分かります。
彼と同じでない状況の人が彼を理解しようとしても、絶対分かり合えないですもの・・・。
とにかくプボーが美しいデスよねっ!
これは、同性愛者と言われるオゾン監督だからこそ描けたのだと思います。
甘美なエロチシズムが感じられます!
他の女性を主人公にした作品からはこういう雰囲気は感じられなかったのでは?

ラストの夕焼けのシーンの美しさ!
ロマンを葬る手向けの花のような気がしましたし、
クレジットの時の寄せては返す波の音は、彼を深い海の底に運んでいくように思えました。

海に始まって、海で終わる。
母(海)から生まれた彼が母の元に返ったようにもとれました。

私の独断と偏見の感想です(^^;
Posted by 紫の上 at 2006年05月17日 23:39
[Em150]紫の上さん
ひゃ〜素晴らしい感想ありがとうございます。とても感銘を受けました。

>他の女性を主人公にした作品からはこういう雰囲気は感じられなかったのでは?

私も全く同感です。
女性には辛辣なオゾン監督ですが、ロマンは自分の分身のようなものなんでしょうね。こういった死をテーマにした物語では、よりいっそうラストの描き方に注目してしまう訳ですが・・・このラストは素晴らしかったです。映画だからこその美しい描き方でしたが、だからこそいつまでも心に残るのですよね〜。シミジミ・・
辛いお話なのに、もう一度観たくなりました。^^

Posted by ラクサナ at 2006年05月18日 00:23
早速TB&コメント感謝です〜♪
先月観てから感想書くまでにかなり時間がたってしまいました。 消化するのに時間がかかったというか・・。逝ってから両親はどう思うだろうとか、もしかしたらお姉さんは気がついていたのでは?と思ったりね。 後半はただただ悲しかったです。
おっしゃるように、オゾン監督は自分を投影してますよね絶対・・
ん〜3作目はどうなることやら?
Posted by マダムS at 2006年06月10日 19:33
[Em150]マダムSさん
コチラこそ有難うございます。
こういう死をテーマにした作品は、なかなか観る側の思いもありますし、状況によっては受け入れ難い話でもあるかもしれませんよね。映画とはいえ彼の家族のことを思うと、どんな思いなんだろうと心痛みます。
オゾン監督作、マダムや皆さんの感想から『ふたりの5つの分かれ路』は、一週間レンタルになってもなかなか手が出せずにいます。(^^;死についての次の第三章も、ちょっと気が重いですが・・どうなんでしょうか・・・。
Posted by ラクサナ at 2006年06月11日 21:39
こんにちは
「ベニスに死す」は午前中の死ですが、こちらは夕暮れの、同じく浜辺での死です。背景には夕映えが、あせずに続き、仏教で言う西方浄土を連想しました。
 また、彼のやせ細った身体は、「ミケランジェロのピエタ」のキリストの身体のように美しいのですが、それを抱くマリア(母親)をあえて避け、海と空ー永遠につづく大自然を、彼は選んだのでは・・・
Posted by Bianca at 2006年06月12日 18:20
[Em150]Biancaさん
こんにちは〜Biancaさん
『ベニスに死す』、そうでしたね〜アッセンバッハ演じるボガードの老いをさらけ出すような波高きらめく朝日の中に・・・
『ぼくを葬る』のロマンの若き死は、それを包み込むような夕映えの中に・・・
西方浄土へ達することがきたのでしょうか・・
>それを抱くマリア(母親)をあえて避け、海と空ー永遠につづく大自然を、彼は選んだのでは・・・
読ませて頂いて、またロマンの気持ちが伝わるような気がしました。
Posted by ラクサナ at 2006年06月13日 09:16
こちらでは、今公開なんですよ〜
なんと、オゾンで泣こうとは!思っても
いませんでした(笑)
オゾンの私小説のような感じで、姉との
葛藤なんかは、きっとそのままなんじゃないかと、思ってしまいました。

メルヴィン・プポー美しかったですね〜〜
「いちばん美しい年齢」を見たときは、
きれいだけど、ちょっと馬鹿っぽくて、いいと
思わなかったのだけど、これでは、ちょっとした表情が、ドキッとするくらい研ぎ澄まされた
美しさがありますよね。

でも私にとってのオゾンは、いつまでも「焼け石に水」なんですよ(笑)あのわけの判らなさ
が懐かしいです(!)
Posted by キウイ at 2006年07月16日 23:57
[Em150]キウイさん
ご覧になりましたか・・やはりオゾンで泣いたご自分にビックリ!?(笑)
確かにオゾン監督っていえば『焼け石に水』『ホームドラマ』等々の、
悪趣味全開な感じが懐かしいですね〜。
そういえば私、『焼け石・・』の若いフランクも、
オゾン監督自身なのかな?っと思った覚えがありますが・・(^_^;)

メルヴィル・プポーは、最近過去チェックで『シューティング・スター』を観ましたが、
その時点でもソコソコの魅力でした。カーディガンズの曲には参りましたが・・。(笑)
プポー君はこれからが楽しみですよね。^^
Posted by ラクサナ at 2006年07月17日 09:51
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