2006年06月01日

グッドナイト&グッドラック

GOOD NIGHT, AND GOOD LUCK-2.jpg

昨年のオスカーでは、監督作2作目のこの『グッドナイト&グッドラック』でも監督賞、脚本賞にノミネートされたジョージ・クルーニー。
“赤狩り”という資本主義の狂気の断罪が蔓延っていた50年代の米国において、自らの信念と報道の誇りにかけて、その恐怖政治に対抗する、TVキャスターのエド・マローとCBSのスタッフ達を描いた作品。

遅咲きの桜だったクルーニーも今はもうハリウッドの申し子みたいですが、
ニュースキャスターであった父親の影響で、一時期自らもジャーナリストを目指していたことも、この作品に色濃く出ている気がします。

全編モノクロで描かれる飾り気のないドキュメンタリー風でありながら、
報道に携わる人間たちの誇りと苦悩の陰影の中、人間の成すべき使命感の素晴らしさと、共にその仕事に携わる連帯感に胸が熱くなる、この作品を自腹を切ってでも作りたかったクルーニーの思いが伝わるような、淡々としていて、それでいて、実に美しく描かれている作品でした。

GOOD NIGHT, AND GOOD LUCK.jpg東西冷戦の緊張が高まり、テレビという媒体が黎明期を迎えたばかりの1950年代アメリカ。同時に国内では共産主義を徹底的に排除しようとする活動も盛んになっており、市民もマスコミも、その前には沈黙をするしかなかった時代。
そんな中、CBSの人気キャスター、エド・マロー(デヴィッド・ストラザーン)とプロデューサーのフレッド・フレンドリー(ジョージ・クルーニー)達は、自らの人気番組『シー・イット・ナウ』で、“赤狩り”という、理不尽な断罪を行うマッカーシー上院議員の欺瞞を暴くべく、徹底したリサーチの元、彼を追及し国民に判断を委ねる番組を放送することに踏み切るのだったが・・・・。


まぁそれにしても、紫煙が立ち込める白黒画面に当時の雰囲気を100%映し出し、マッカーシズムに対抗するCBSのアンカーマン、エド・マローたちの姿。まるで上質のドキュメンタリーのようで、ここに田口トモロヲのナレーションを入れたいぐらいですが・・・わーい(嬉しい顔)
Good Night, and Good Luck-5.jpgそこはジャズ界の大御所、故ローズマリー・クルーニーの甥っ子クルちゃんのこと、このドキュメンタリーを彩るのは、何とも心地よいジャズナンバーの数々るんるん
ジャズシンガーであるダイアン・リーヴスにまで劇中歌わせるという、何とも50年代のその雰囲気が良い感じ。
GOOD NIGHT, AND GOOD LUCK-1.jpg私は正直、こんな内容なのに気持ちよすぎて困りました。
娯楽作品とは言いがたい抑揚のない作品ですが、見逃すこと、聞き逃すことのできないシーンや台詞がたくさん詰まったクルちゃんならではの作品。
だから寝る訳にもいかないのだ!がく〜(落胆した顔)
紫煙を燻らせるマローが、番組を「グッドナイト、アンド、グッドラック!」の決まり文句で締めるシーン。マロー役のデヴィッド・ストラザーンの役作りも絶品です。
そして、いつも番組のオンエア中、マローの足元にいるクルーニー演じるプロデューサーのフレッド。
マッカーシーに関する放送の準備に余念のないマローが一人、深夜誰もいないかのようなオフィスでタイプを打つ姿を大写しにすると、横の長いすにも又うつむいて黙々と仕事に打ち込むフレッドがいるのです。何かしら胸が熱くなる、台詞もなく一瞬映し出されるその二人の姿。
マッカーシーという時代の怪物を、封じ込めたかのように歓喜する中にも、時代の流れで番組に見切りをつけなければならなくなるくだり。そして自らの弱さからか、犠牲となった一人の同僚の悲劇。

“赤狩り”というと、私的には何年か前のアカデミー授賞式で、名誉賞を与えられたエリア・カザン監督に対しての客席の多数の俳優たちの態度が思い出されますが、半世紀を過ぎても尚、アメリカの人々に色濃く残っている事件なのだということ。
その中のマッカーシーvsCBSの部分を切り取っただけのこの作品ではあるけれど、その時代の人々の思いを又強く知ることができたことに敬意を表したい思い。

そして現在という時代に、この作品を観て思うこと。

冒頭、既に「シー・イット・ナウ」も番組終了を余儀なくされた5年後のラジオ・テレビ・ニュース・ディレクターズ協会の年次総会で、その夜のゲスト・スピーカーであるマローの語る一説。
「50年後100年後の歴史家が、もし現在の三大ネットワークの一週間分のテレビ番組を見たならば・・・彼らはこの世に蔓延る退廃と現実逃避、一般社会との隔絶を感じることでしょう。今の我々は裕福で肥え太り、安楽さの中に浸りきって、不快な、または不安をもよおすニュースにはアレルギー反応を起こします。マスメディアもそれに追随しています。だが我々はテレビの現状を直視しなけらばなりません。テレビは人を欺き、娯しませ、そして現実から目をそらせる。そのことに製作者も視聴者もスポンサーも気づかなければ、手遅れになってしまうのです・・・」(グッドナイト&グッドラック、ノヴェライゼーションより)


マローのそのスピーチの50年後の現在、私たちは本当に「今は違う」と言えるのだろうか・・・ということ。





posted by ラクサナ at 23:42 | Comment(7) | TrackBack(1) | 2006年 6月映画鑑賞作品
この記事へのコメント
私もこれ見てますよ〜〜
実際のマッカシーの当時の映像を出しているので、まるでドキュメンタリ−を見てるようでしたね、
「聞き逃すことのできない台詞」がほんとに多くて、今を振り返るのに適した映画ダナと思いました。
ストラザーンの懐かしい発音(昔の映画ニュースでよく聞いた言い回し)も、当時を
よく表してた思うし、社内結婚ご法度には、
あのアメリカで?とビックリもしました。
Posted by キウイ at 2006年06月06日 01:59
夫が公開前からすごく見たがっていて、初日に見に行きました。
脇役でよく見るデヴィッド・ストラザーン。先日「激流」のテレビ放映で、ここにも出てたかと思いました。
白黒だと、クルーニーの二枚目度が増して見えた気がします。
誠実で誇り高い報道人が増えて欲しいと思うと共に、視聴者も、何が真実か、判断力を養わねばと思います。
Posted by MACHI at 2006年06月06日 08:06
はじめまして。31日に大阪で見ました。
なんと格好いいんでしょう!
デヴィッド・ストラザーン、エド・マロー、ジョージ・クルーニーの三人。
早速、田草川弘著「ニュースキャスター」(中公新書)
を図書館から借りてきました。
Posted by Bianca at 2006年06月06日 16:48
今晩は〜
私は個人的にはこれに作品賞をあげたかったぐらいです。全編に渡って渋い渋い!
劇中のジャズがまたいいんですよねー。

エド・マローももちろんよかったけど、ジョージ・クルーニーのフレッド役はおいしかったような気もします。これが実話だということがより重厚感がありますね。
Posted by mei at 2006年06月06日 23:17
[Em77]キウイさん
本当にマッカーシーや尋問のシーンなど本物を使っていて、それも又モノクロの画面の成せる業かもしれませんが、まるで全てが本物のドキュメンタリーの様を呈していましたよね。
社内恋愛ご法度の二人、R・ダウニーJrとP・クラークソンも良い雰囲気でしたね。
ストラザーン演じるマローの決め台詞、グッドラックの後一拍置いて、アンド、グッドナイト・・かっこいいですね!^^
そうそう、マローの同僚たちの中に、あの『ホミサイド』、ケラマン刑事役のリード・ダイヤモンドが出てましたね〜。^^

[Em77]MACHIさん
旦那様との鑑賞、ご苦労様でした。^^
ストラザーン、『激流』では、あの二の腕メリルお母様の夫役でしたでしょうか。(懐)元からなかなか端正なお顔の男優で、アチコチで見かけた覚えはあるけど、あまりインパクトがなく、今回のマロー役で、渋く大ブレイクした気がしますよね。しかしタバコを四六時中吸いながら、オンエア中も!それが様になるのもあの時代ならではですよね〜。[Em66]^^;
ウチの旦那も観たがってましたけど、先に一人で観ちゃいました!(笑;)

[Em77]Bianca さん
初めまして!コメントありがとうございます。
本当に、全てがかっこよく、潔い映画でしたね。
私は鑑賞後、思わずパンフよりもノヴェライズ本買って、一気に読んでしまいましたが、田草川弘著「ニュースキャスター」には、マローのロンドン時代のことや、晩年のエピソードなどもありの評伝なんでしょうね。私もとても興味があるので、読んでみようかな。
また感想などよろしかったらお聞かせください。
Posted by ラクサナ at 2006年06月06日 23:32
あの、ちょっと寄ったおメメが懐かしかったです〜〜!
「ポセイドン」は御覧になりましたか?
なんと、船長が、ペンブルトン刑事なんですよ!!白髪が混じって、年月を感じましたわ(泣)
Posted by キウイ at 2006年06月07日 01:21
[Em77]キウイさん
『ポセイドン』、今日観て来ましたよ。
予告でもチェックしてたペンブルトン、出てましたね〜老けてました。。(TT)
でもパーティーでの司会みたいなシーンから彼は始まっちゃって、言われなきゃ船長だと判らない辺りが、ちょっと気の毒でした。
そういえばオリジナルでの船長役は、レスリ・ニールセンでしたね。こちらも後から言われなきゃ判らない感じでしたが。^^;
引き続き『ホミサイド』繋がりで、ガーティ刑事役のピーター・ゲレッティが、『インサイド・マン』に出ていましたよ。^^


Posted by ラクサナ at 2006年06月08日 17:57
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グッドナイト&グッドラック
Excerpt: 「マッカーシズム」の時代を取り上げ、権力と真っ向から対決した実在のニュースキャスター、エド・マローと、そのクルーたちの6ヶ月間にわたる戦いを描いた真実の物語。渋いです。
Weblog: Prime time CINEMA
Tracked: 2006-06-06 23:20
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