2006年06月14日

愛より強く

Gegen die Wand.jpg2003年のベルリン映画祭、ドイツ映画としては18年ぶりの金熊賞受賞作品。ぴかぴか(新しい)

かなりハードなラブストーリーということで観てきましたが、さすがに心に痛く響く、余韻の残る作品でした。

この邦題、以前観たロマン・デュリス主演の『愛より強い旅』に被りますよね。(^^;
『愛より強い旅』は、フランスからアルジェリアへの自分探しのロード・ムービーでしたが・・・
この『愛より強く』は、ハンブルグとイスタンブールを舞台に、
トルコ系ドイツ人男女の、偽りから生まれた衝撃的で赤裸々な愛の物語。

しかし、単純な大人の男女の愛のストーリーとはいかず、
ドイツにおいて320万人を超えるというその殆どがトルコからの移民であり、戒律厳しいイスラム教徒であること。
彼らの失業率が非常に高いことなど、やはり背景にはそんな民族的な問題が色濃く出ており・・・
若干30歳そこそこの若さ(驚;)でこの作品を撮ったファティ・アキン監督も、主役二人も同じくトルコ系ドイツ人。
そしてトルコの伝統的な民族音楽が流れるけれど、それだけではなく!
イスタンブール港をバックに、冒頭から物語の節目に登場するそのバンドと一人の女性が歌う曲が、この物語のストーリーテラー的な役割を果たしていて・・・やはりロマ、ジプシー音楽なんですねるんるん
そんな民族的背景や音楽が、激しくも切ない二人の物語を、よりいっそう印象深いものにしています。もうやだ〜(悲しい顔)

Gegen die Wand-4.jpgドイツの北方、ハンブルグの街で、今は飲食店の清掃を仕事としている元ロッカーのジャイト(ビロル・ユーネル)40歳は、妻を亡くし人生に絶望して自殺未遂を起こしてしまう。奇跡的にも一命を取り止めた彼は心の病の為、病院でカウンセラーを受けるのだが・・・
そんな彼を病院で見かけた、若く美しいトルコ系ドイツ人の女性ジベル(ジーベル・ケキリ)は、ジャイトもまた同じトルコ系であることを知り、彼に偽装結婚を懇願する。図らずも彼女のその願いを受け、お互いを干渉しないことを前提にして愛のない結婚をするジャイトだが・・・いつしか彼女を愛し始めた自分に気づく。しかしジベルはイスラム教徒である厳しい家庭を離れ、勝手気ままに男性遍歴を重ねる。
そんなジベルの行為から、ある日事件が起きてしまい・・・ジベル自身も自分のジャイトへの思いを知るのだが・・・・。


Gegen die Wand-2.jpgとにかくこの映画の主演二人の演技というか存在感が凄い!
このジベルは、誰とでも自由なSEXを楽しんで自由な生活を送りたい。
ただその為に何度もリストカットをし、偽装結婚を懇願する。
まぁ何たら女だろう〜!っと思ってしまうけれど・・・がく〜(落胆した顔)
監督自身も以前、ある女性から偽装結婚を頼まれた経験があり、そのことに触発されての今作だそうで、トルコ系の若い女性はイスラムの教えから、恋愛も生活も随分閉鎖的な厳しい状況を余儀なくされてきたのでしょうね。
特に文化や芸術性にも富むハンブルグという地に住めばそれも尚更だと思います。
そんなジベルの役柄を演じるジーベル・ケキリ、ちょっと若い頃のシェールを彷彿とさせるような印象的なお顔。
監督にショッピング・センターでスカウトされ、この映画が初主演であるという23歳。
後にポルノ映画に出演していた事が発覚して、ドイツやトルコでも大変な話題となったようだが、それもよく判る気がする初主演とは思えぬ大胆な演技とセクシーな魅力で、難しい役柄に説得力を与えている。

Gegen die Wand-3.jpgうまく行かない人生に嫌気がさした、元パンクのロッカー崩れのジャイトもまた、「パンクは死なねぇ〜!」なんて叫んで、ヤケクソの生活。情けない40歳の男・・・でも、演じるビロル・ユーネルの疲れ果てたその横顔と雰囲気はとても味があるんですね〜。
彼のパンクバンド崩れという設定は、その中でもどうやらゴシック・パンク系らしく、前半シスターズ・オブ・マーシーやら デペッシュ・モードやらがさかんに 流れるけれど、段々とそれも前述したトルコの民族音楽一本に変わってくる辺りが、物語の行方に平行しているようで何とも味わい深い音楽の演出。

二人が偽装結婚をする前後から、突然血飛沫は散るはドラッグに溺れるは・・・
とにかく熱く痛いシーンも多いし、ラブシーンの描写も半端じゃないがく〜(落胆した顔)
でもそんな二人が愛を知る。愛を知るということで、40代の男と20代の女は堕ちるとこまで堕ちて、人間的な成長をしていき・・・やはり図らずも愛を弄んでしまった分、罰を受ける・・・。
そんな物語のラストには涙だけではなく、嫌われ松子ちゃんのように「なんでぇーーー!?」っと問いかけることもできず、観ているコチラも納得させられてしまう・・・!もうやだ〜(悲しい顔)
只今ワールドカップで、寝不足なドイツの作品。(^^;
なんともいつまでも引きずってしまいそうな恋愛劇でした。

Transylvania−1.jpgそれはそうと、情けない中年ロッカーをとても魅力的に演じていた主演のビロル・ユーネルは、この後カンヌ映画祭のクロージング作品、
『愛より強い旅』のトニー・ガトリフ監督の『トランシルヴァニア』でアーシア・アルジェントと共演しているとか・・・
かなり楽しみであります。揺れるハート



posted by ラクサナ at 20:55 | Comment(8) | TrackBack(4) | 2006年 6月映画鑑賞作品
この記事へのコメント
偽装結婚から愛が生まれ...というと、「グリーンカード」を思い出しますが、こちらは、シビアで辛く悲しいですねえ。
お互いもっと早く自分の気持ちに気づいて、相手に伝えていれば...と泣けました。ジェイトには、強く生きて欲しいです。
Posted by MACHI at 2006年06月17日 22:28
[Em137]MACHIさん
『グリーンカード』、ドパルデューの嘘から出たまことの王道を行くラブロマンスでしたね。これでグリーンカードの意味も知りました。
偽装結婚っていうと『コーリャ 愛のプラハ』なんて、男女の愛ではない作品も思い出しますが・・・。

気づいた時には遅い愛・・・
ラストで荷造りの手を止める彼女の後姿が、切なかったです。
Posted by ラクサナ at 2006年06月18日 17:09
去年のドイツ映画祭のパンフレットにこの作品がありました。(今頃気づいた,汗)
このときは、タイトルが「愛より速く」となっています。

戦後の西ドイツでは、労働力不足解消のためにトルコからも多くの人々が招かれたそうです。彼らが家族を呼び寄せて定住するようになった結果、現在ではドイツに住む外国人としては最大勢力になり、トルコ的要素はドイツ文化のなかにすっかり溶け込んでいるって書いてありました。どの大都市にも、トルコ人街ができてるんですって。そんな事、初めて知りました。
Posted by MACHI at 2006年06月27日 09:58
[Em137]MACHIさん
おっと、どっかでこの作品の邦題が『愛より速く』になっててオカシイな?っと思ってたんですよ〜そうだったんですか!
ドイツ映画祭パンフレットにもドイツにおけるトルコのあり方など詳しく載せてあるんですね〜!有難うございました。
そういえばワールドカップ、前大会3位だったトルコって予選敗退しちゃったんですよね。(−−;
前大会時、イルハン君含め主力選手はドイツ生まれドイツ育ちが多いと聞きましたが・・・地元のワールドカップに出られないとは無念だったでしょうね〜〜。(泣)
Posted by ラクサナ at 2006年06月27日 17:13
こんにちはー。
ビロル・ユーネル!よかったですよねー。
今夜は上半期ベストをまとめる予定なんですが、この映画は上位に入ること必須です。
痛い映画でしたが、とても気に入っています♪
ベルリンではドネルケバブ屋さんをやっているトルコ人をよく見かけました。
来月はドイツ映画祭も楽しみ。
Posted by かえる at 2006年06月30日 12:51
[Em137]かえるさん
おっと、もう今年も半分終わってしまいましたね。かえるさんの上半期のベスト、興味津々!
是非是非、拝見させて頂きたいです。
この作品も本当にインパクト大きいですよね。
かえるさんは、ヨーロッパから帰られたばかりですか?何とも羨ましい!
ドネルケバブ・・・よく冷えたビールに合いそう!って・・(^^;コレもトルコ人がドイツに持ち込んだお料理の文化なんですよね。
ドイツ映画祭の感想も楽しみにしています♪
Posted by ラクサナ at 2006年07月01日 00:40
こんばんは!
もう滅茶クールoyajiでビロル・ユーネル最高でしたね!!
トルコ・ミュージック演奏並びに歌のシーンGoodでしたわ。ラストの演奏家たちのお辞儀もシャレてましたね。
イスタンブールの美しさにため息が出ました。
行きたい!!飛んでイスタンブール〜なんて歌ありましたよね??
とりあえず今年初の海外はベトナムに決めました!来月行く予定です。ラクサナさんは今年はどちらへ??
Posted by margot2005 at 2007年02月06日 23:33
[Em137]margotさん
ビロル・ユーネルの渋悪ロッカー・オヤジは極上の本物でしたよね!^^
そうそう、どうしても庄野真代のあの歌が想い出されてしまうのですが・・・イスタンプール!例えようもなく美しい国のようで、行ってみたいですね。

おっと今年お初はベトナムへ行かれますか!?美味しそう!って又食べることばかりに気が行く私ですが・・(^^;
旅なれた王妃様は大丈夫とは思いますが・・・紫外線対策だけはシッカリなさってお出かけください。
去年ベトナムへ行った友人が、蕁麻疹が出ちゃって美味しいものが恐くて全然食べられなかったけど、原因は紫外線のようだったらしいです。(^^;
いやん、私は今年はおフランスざんす!っと言いところですが・・・今のとこ予定無しですわん。[Em170]

Posted by ラクサナ at 2007年02月07日 23:43
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