2006年10月03日

カポーティ

capo.jpg

ノンフィクション・ノベルという新たなジャンルを切り拓いたトルーマン・カポーティの『冷血』。
その完成までの道のりを描き出したカポーティの伝記ドラマ。
カポーティその人の演技を絶賛され、オスカーに輝いたフィリップ・シーモア・ホフマンをどうしても観たい作品です。


50年代から60年代にかけて、様々な話題をふりまいた小説家にして、セレブリティなカポーティ。
『ティファニーで朝食を』の原作者であることは有名だが、ヴィットリオ・デ・シーカの『終着駅』や、デボラ・カー主演の『回転』等の脚本も書き、『名探偵登場』や『アニー・ホール』では出演もしている。
目新しい所では、NYディスコ・クラブ“54 ”を描いたライアン・フィリップ主演の『54 フィフティ★フォー』で、着飾った年寄りセレブの常連客として、本人ではないが顔を見せていた、調度アンディ・ウォーホルも同世代で、共にゲイであった訳ですね。

1959年11月15日、カンザス州にあるホルカムという田舎町で起きた一家4人の惨殺事件。
トルーマン・カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、偶然新聞でその事件を知り、興味を抱く。
早速、幼馴染みの女流作家ネル・ハーパー・リー(キャサリン・キーナー)を協力者として伴い、取材に向かい、現地の刑事(クリス・クーパー)と、その妻とも懇意となるカポーティ。
そして遂に犯人二人が逮捕され、そのうちの1人ペリー・スミス(クリフト・コリンズ・Jr)の稀有な魅力に惹かれ、彼に接触していく中で、彼は犯人であるペリーの中に、自分自身を重ねるような何かを感じてゆくのだが・・・。


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やはり、なかなか凄い作品でした。

カポーティが長い年月をかけた取材の末に『冷血』というノンフィクション・ノベルを完成させたように、この作品も2時間という上映時間の中で、カポーティという人間の心の闇を、その行動や会話で、じっくりと描いていきます。
フィリップ・シーモア・ホフマンの作り出すカポーティは、ゲイであるという独特の口調に風貌も勿論ですが、その内面にまで迫る、かなりの演技であることは、カポーティ本人を知らなくても納得させられてしまう程。

カポーティの幼馴染みであるという、あのピューリッツァアー賞を受賞した『ものまね鳥を殺すには』の作者、ハーパー・リーを演じるキャサリン・キーナーもオスカー候補になっただけある見事な存在感。
終盤、彼女がカポーティに与える一言には、鳥肌がたちました。
劇中『アラバマ物語』の試写会に彼女がカポーティと出かけるシーンもありますが、彼女の原作を賞賛する彼が、映画をこき下ろす一言も面白い。そういえば原作とは、かなり異なってしまったオードリー・ヘップバーンの映画『ティファニーで朝食を』も、彼にとっては苦言を呈したい作品だったのかもしれませんね。(笑;)

そして特筆すべきは、キャサリン・キーナーと同様に、犯人のペリーを演じたクリフト・コリンズ・Jr。
芸術的な才能と不幸な生い立ちを持ち、カポーティを信頼してゆく中で、減刑を願う物静かな一面を呈するその人物像の影に・・・・どうにも隠し切れない凶暴なふてぶてしさを一瞬垣間見せる演技。

結局、自分の作品を完成させる為にあたって、カポーティは自分の中にもある冷血な部分を知り、苦悩していくのだけれど、それは、彼自ら語った、同じようなような生い立ちのペリーを「私は表口から出たが、彼は裏口から出た」と称しことに大きく重なってゆく。
自分はペリーとは違うけれど・・・同じだ!という何とも言い難い苦悩。

この作品を観て、思いの外ホフマンを演じるカポーティが普通の感性を持つ弱い人間のように描かれていることにも、想像とは違い絶句するものがありました。
それ故に自分の内にある物にも知らぬうちに気づかされてしまう・・・そんな恐ろしさをカポーティと共有してしまう部分を感じさせられてしまったのかもしれません。

ということで、やはりノンフィクション・ノベルの『冷血』を買ってきてしまった私です。ダッシュ(走り出すさま)
読めば又、この映画の感想も変わってくるかもしれませんが・・・いつ読めるかな???わーい(嬉しい顔)
posted by ラクサナ at 17:27 | Comment(10) | TrackBack(5) | 2006年10月映画鑑賞作品
この記事へのコメント
いや〜ホフマン!素晴らしかったですね!
予告編ばっかり何度も見せられて一般公開まで長かったことっ!(笑;)
ご本人が出ている「アニー・ホール」もう一回観てみようかしら・・そっか、アンディ・ウォーホルも同世代なんですねーー。
カポーティ自身にとても興味があります。
私は「パリス・レビュー」という文芸誌(知らないですが)の編集長であるジョージ・プリンプトンという人が書いた『トルーマン・カポーティ』という文庫を買ってみました。写真が一杯ついてるので・・

Posted by マダムS at 2006年10月06日 10:24
[Em169]マダムSさん

そうそう長かったですよね〜公開まで。
私もカポーティのことは、観る前にちょっと調べたぐらいで・・・(^^;ゞ
日本じゃそんなでもないけれど、本国じゃかなりの知名度なんでしょうね〜。
それ故にホフマンさんのプレッシャーも大変だったのではないかと・・
さすがの成りきり度でしたね。

ひゃ〜私も本の方は迷ったんですよ〜!
ジョージ・プリンプトン著の方は、上下巻だったんで・・・冷血にしときました。(笑;)
いつの日か読み終えたら交換レンタル、予約してもいいでしょうか?(^^;

Posted by ラクサナ at 2006年10月06日 22:14
ありがとうございます!
交換レンタル、予約承りました♪(^^)v
Posted by マダムS at 2006年10月07日 09:06
[Em169]マダムSさま

きゃー有難うございます♪
宜しくお願いします!^^
Posted by ラクサナ at 2006年10月09日 15:18
ふっふっふ。
「冷血」(新訳)を読んでから観に行きましたとも。
二段になっていてかなりボリュームがありましたが・・・。
NYのBARでシニカルなシモネタで笑いをとるカポーティの姿から、ふとウディ・アレンを連想してしまい、余計に親近感をもってしまったのでした。
Posted by かえる at 2006年10月16日 13:07
[Em169]かえるさん

おっと、さすが!
「冷血」読まれておりましたか・・!
私はまだ“あとがき”しか読んでおりません。。。(爆;)
「冷血」もリチャード・ブルックスで映画化されてますよね、未見ですが。

自称「アル中でヤク中でホモの天才」だけれど、親友は何故か女性ばかり・・・というのも何とも。
NYのBARで彼の辛らつな毒舌ジョークを、一杯やりながら聞いてみたいもんですねぇ。^^
Posted by ラクサナ at 2006年10月17日 00:02
度々お邪魔しま〜す(汗)しつこくてごめんなさい・・(^^;)
「ティファニー〜」本のこと、もう一つのブログで記事にしましたので、よろしかったらお暇なおりにでも覗いてみてね♪
もちろんラストはネタバレしてませんのでご安心を♪
Posted by マダムS at 2006年10月17日 14:10
[Em169]マダムSさん

別ブログのマダムの素敵な記事、拝見してきましたよ〜!
ますます『ティファニーで朝食を』の原作を読むのが楽しみになってきました♪
おっと、それより早く『冷血』読まねば!(^^;
でも、その前に・・(おいおい!)
カポーティ原作で、彼の少年時代を描いた『グラスハーブ/草の竪琴』、観てみますね!^^
Posted by ラクサナ at 2006年10月18日 10:13
ラクサナさん、こんにちわ。
いささか時期はずれですが、こんな映画を見ましたので寅米します。
Posted by Bianca at 2007年06月11日 19:37
[Em169]Biancaさん

寅米有難うございます。
『アラバマ物語』、また観てみたい・・・私にも印象深い作品です。
『カポーティ』の中でも、アラバマ・・の原作者であるハーパー・リーの存在は特別な物がありました。
名作に時期は関係ありませんよね。^^

Posted by ラクサナ at 2007年06月13日 16:01
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