
韓国で鬼才と呼ばれるキム・ギドク監督の、老人と少女の愛を描いた作品。
『うつせみ』『サマリア』など、ギドク監督作は未見な私なので、この作品で初めて目が点になって帰ってきました。(笑;)
何とも鮮烈にして、可愛くて、汚らしくて、美しくて・・・切なくて・・・未だにその映像のソコココが目に浮かびます。。。
船上のお話ゆえか・・・・かなり精神的に酔いますね〜これは。(^^;
愛を奏でる弓、人を射る弓、弓の持つ二面性に・・・
最後には観ているこちらも射抜かれてしまった気が・・・

老人(チョン・ソンファン)と少女(ハン・ヨルム)は海に浮かぶ船の上に、二人で暮らしていた。
老人は生計の為に、その船を釣り船として開放していた。
老人は弓で少女の為に美しい曲を奏で、またその弓で、悪戯をする釣り客から少女を守った。
老人は、10年前から17歳になる少女との結婚を心待ちにしていた。
だが・・・ある日、
少女は、1人の青年との出会いによって、今までに老人が見たことの無い顔を見せはじめる・・・。

コチラ韓国の『弓』の老人と少女は、あくまでも男と女、物語的には、かなりヤバイお話でございますー。
スカートから白くのびた若々しくも美しい足を惜しげもなく露出させ、釣り人達を翻弄しておきながら、老人の弓に守られる事を無意識にも喜んでいるかのような少女は、もう一人前の女の色香を放っているし、
少女をほぼ監禁状態で、自分のものとする老人の欲望にはどうしても嫌悪感がつきまとう。
少女を演じたハン・ヨムルの演技、その魅力は凄い。
枯れてそうで枯れてない老人を演じたチョン・ソファンは、ちょっと森山周一郎入っているような・・(^^;
でもこの刑事コジャック(爆)と少女は台詞らしい台詞を喋らないんですよね。
それが二人の関係の生々しさを極力抑えていることにも繋がる演出な気がします。

古く錆付いたような船での二人の生活の中で、老人が少女を守る弓で奏でるヘグム(韓国二胡)の曲も美しく・・・
少女の成長を見守る子守唄のようでもあり、“弓占い”として、ブランコを漕ぐ少女をかすめて、船体に描かれた観音像を射抜くシーンも、まるで『橋の上の娘』のように官能的で・・・
その弓と共に二人が暮らす生活は、その後にくるであろう予定調和な波乱を感じつつも、観る者を惹きつけますね。
ただ、ちょっと残念なのは、老人が弓(へグム)を奏でるシーンと、実際に流れる曲が結びつかないのが音楽的配慮としてはイマイチな気もするのですが・・・(^^;
冒頭どんな経緯で老人と10年の生活を共にしてきたかなどは語られず、終始二人の会話が露にならないのも物語を神秘的に彩っているし、老人が少女の為に、少しずつ整えていく婚礼の衣装の美しさにも目を見張る。
不思議なもので、婚礼の衣装を身にまとい、他者を寄せ付けない二人のシーンを眺めていると、老人と少女を隔てる年齢という概念が、全く気にならなくなる。
そして予定調和かと思われたストーリーに・・・・・
老人が最期の弓を射り、その矢の行く末を魅せつけられるシーンの鮮烈さに驚愕。
この映画の最も好きで嫌いなシーンとでも言っておきましょうか・・。(^^;
そして、二人の愛の絆は永遠に紡がれる・・・・。
しかし、永遠は老人にとってのものであり・・・・
少女にとっては、一つの通過点に過ぎないのかもしれない・・・。
っと最後の少女の顔を見て、どうしてもそう思って(思いたい)しまう私なのです。
はぁ〜参りました。

美しい衣装やら弓の奏でる音楽の魅力よりも、もうなんか嫌悪感の方が勝っちゃって〜〜とほほ。
しかもご指摘のとおり、ご老人の演奏する手と美しい音楽がてんで一致してない時点ですっかり引いてしまって・・そういう細かい点にも手を抜かないで欲しいなどと思うのでありました。
同じギドク監督のでも『うつせみ』はOKだったんですがね・・(^^;)
>私はこれまったくダメでございましたー!
よく判ります。。。(^_^.)
私にも・・ともすると嫌悪感との戦いのようなラブストーリーでした。
あのラストは、この作品には外せないものかもしれませんが・・・
ここまでするか!?みたいな・・・(^^;
韓国の作品って、やるんなら徹底的って感じで、それが好みに合えばよいけれど・・細かい部分のアラも気になりますよね。
そうですか『うつせみ』、是非観てみたいです。^^
何とも言えないのですが、
予告の映像は引き付けられますね!
ギドク監督の作品は「うつせみ」「春夏秋冬そして春」「コーストガード」と3本見てますが、どれも一秒たりとも目が離せない
緊張があります。
「弓」もほとんど台詞がないそうですが、
「うつせみ」も、主人公には一切言葉をしゃべらせてないですものね。
監督は、台詞をあまり信用してないと言うか、映像だけで、伝えたいと言う思いが強いんでしょうね、だから画面から目が離せないんだと思うんですよ。
私はギドク作品はお初でしたが、何ともな究極の愛の設定に、画面もキャストも観る者を挽きつける感じですよね〜。
今回のヒロインのハン・ヨルムは、『サマリア』にも出演していた監督の秘蔵っ子のようですが、実年齢は20歳を少し超えている女優さんなのに、17歳足らずの少女を、その清純さと妖気漂うような色香で本当に見事に演じていまして、同じ年齢の娘を持つ母親としては、ちょっと観ていてショックなシーンもありました。
実際の父娘では無いとしても、監督は違えど『オールド・ボーイ』のような気分になる部分もあって、まぁ自分の価値観の中にだけ愛は存在するわけはないか・・・っということをまざまざと見せつけられた感じ。
好き嫌いはあるけれど、なかなかの作品だと思います。う〜〜む。(^^;
これから『うつせみ』などのギドク監督作、観てみたいと思っております。
私もじいさんの演奏の様子と実際に聴こえる音楽にギャップがあるのが気になりました・・・。
とはいえ、ギドク脚本はありえない感を越える面白さがありまするー。
好きなのは『春夏秋冬〜』あたりだけど、『受取人不明』などにも圧倒されましたー
ホント、この作品の音楽使いはちょっと残念ではありましたが、ビジュアル的には、なかなか気に入っております。
オンボロ船の色とりどりな穴あきソファーとか、シマチョゴリのような丹青の色使いがいいですよね。
やはりギドク監督作は、全て鑑賞されてますか!?
『受取人不明』、タイトルからして、何かありそうですね。
海つながりで『魚と寝る女』も気になっております。^^