2006年12月09日

硫黄島からの手紙

Letters from IWOJIMA.jpg
硫黄島の戦いを、日米双方の視点で描く2部作の2作目。
米留学の経験を持ちながら、硫黄島での闘いにおいて、アメリカを最も苦しめたとされる栗林中将以下、不利な戦況の中で戦い続けた日本軍を描く作品。

観て参りました〜公開初日!
やはり戦争映画ではなく反戦映画として、深く心に沁みいる作品でした。

確かに居たあの硫黄島の人々の思いを・・・
国籍は関係なく、同じ人間として散っていた人々の思いを・・・
感じ入るイーストウッド作品でした。





Letters from IWOJIMA-1.JPG第二次世界大戦末期、戦況が悪化の一途を辿る1944年6月、日本軍の最重要拠点である硫黄島に新たな指揮官として栗林中将(渡辺謙)が降り立つ。
本土防衛の最後の砦ともいうべき硫黄島においても日本軍の体質である精神論が幅を利かせ、二等兵である西郷(二宮和也)達は無意味な体罰に苦しめられ、悪化する戦況の中絶望感の中にいたが、米に留学経験もある栗林の合理的な指揮により西郷は体罰から助けられ、かすかな希望を感じ始める。
しかし栗林の進歩的な考えに反発を強める古参の将校たち、伊藤中尉(中村獅童)らとの対立は深まるばかりだった。
一方、ロサンゼルス・オリンピック馬術競技金メダリストの“バロン西”こと西竹一中佐のような理解者も増え、圧倒的な戦力のアメリカ軍を迎え撃つため、栗林は島中に張り巡らせた地下要塞の構築を進めていく。
そんな中、遂に圧倒的物量を持ってアメリカ軍が硫黄島に総攻撃をかけるべく上陸するのだった・・・。



冒頭は“硫黄島協会”のメンバーが島の洞窟から幾束の手紙を発掘し、その手紙から過去のシーンへと繋ぐ形になっている。
映画の中では、『玉砕総指揮官の絵手紙』や『栗林忠道硫黄島からの手紙』などの原作を元に、栗林中将が留学先のアメリカから硫黄島から家族に宛てた手紙、下級士官である西郷達が家族に宛てた手紙、又アメリカの兵士の母親からの手紙のシーン等が盛り込まれ、日米双方誰一人として分け隔てなく、理不尽な戦争に大事な命を奪われようとしている思いを強く感じる。

けれど、『父親たち・・』に比べると、ほぼ時系列に進むストーリーは、驚くほどストレート。

勿論『父親たちの星条旗』とリンクするシーンや台詞も多々あり、擂鉢山に掲げられた星条旗を遠巻き眺めるシーン、父親たち・・でジェイミー・ベルが演じた兵士の末路を思わせるシーンも容赦なく描かれ涙を誘う。

要所要所、目を覆いたくなうような悲惨なシーンもあるけれど・・・
そんな中でやはり印象に残るのが「ことここに極まれり」な日本軍の神格化された“玉砕”という思想。
栗林中将の「本土を守る為に一日でも長く守りつづける」という意義、命令に相反する行為として、これは映画の中では神聖なものとは全く違い、上官による命令という、ある意味殺人行為として本当に悲惨に描かれる。
日本人として潔しと言われ思われ続けたものは、実は何であったか・・・
その辺りも現代に通じるテーマとして、イーストウッドが伝えたい思いなんでしょうね。
そして、一貫した戦争に対する矛盾に繋がる生死の分かれ目も容赦が無いのですよね。
Letters from IWOJIMA-2.JPG総指揮官という立場の栗林中将が、自らの思いを託し二度まで助けた西郷に「二度あることは三度ある」という言葉を残していく姿。
指揮系統も歪曲してしまった日本軍の中で、ラストに西郷が見せる怒りこそ、人間としての本当の意味での忠誠、あるいは心の持ち方なのではないかと目頭が熱くなりました。
西郷役の二宮君は、どちらかというと現代っ子そのものの感があり、その語り口を持って演じているけれど、
そんな彼の目線がこの作品を今に通じる物として、おそらくは日本の若い世代や他国の観客に広く伝える感じがあって、やはり演技もとても良かったと思いました。

Letters from IWOJIMA-3.JPG元五輪金メダリストのバロン西を演じる伊原剛志も存在感があって、彼一人のエピソードでも映画が一本できそうな気がします。
そしてこの作品で私的に楽しみだった、バロン西の側近であった大久保中尉役の尾崎栄次郎。
彼は『ラストサムライ』にも出演していますが、世界を拠点にした俳優としての夢を実現するべく頑張ってみえる若き俳優さんです。
マダムSさんのご紹介で彼の存在を知り、本当にその活躍を楽しみにしていましたけど、今回は本当に存在感ある役柄で、その熱演を堪能して参りました。
彼の役柄は真面目な士官でありながら、栗林中尉と同様に合理的現代的な指揮官、バロン西の人間的な姿勢を学んだ感のある見事な演技でした。
そんなこの作品の極限におけるそれぞれの角度からの人間ドラマを演じる出演者たちの演技は、それぞれに素晴らしく・・・
ただ少し残念だったのは、伊藤中佐を演じる中村獅童かな。
玉砕を念じながら結局最後には何を思ったのか、大変な役柄であったかもしれませんが、彼の演技では私にはあまり伝わらなかった気がするんですよね。


Letters from IWOJIMA-4.JPG

とにかく日米双方が勇士として描かれたかと思えばその逆も描かれ、彼らがこの島で戦った事実というよりも、戦争というものへの矛盾をテーマにした作品であることは、先の第一部『父親たちの星条旗』と同じスタンスであり・・・
そしてことさらに心の葛藤やその命への思い、現代にも通じる「どう生き、死ぬべきか」を戦争という中で描ききったイーストウッドの『硫黄島からの手紙』。
海外からの評価が高いのもうかがい知れる・・・
第一部、第二部と観終わって、何かやはり言うに言われぬ一つの重みを深く感じいる作品でしたね。

posted by ラクサナ at 23:18 | Comment(14) | TrackBack(5) | 2006年 12月映画鑑賞作品
この記事へのコメント
来ましたねっ、とうとう。私も近く
見に行く予定です。
Posted by Bianca at 2006年12月11日 22:15
[Em106]Biancaさん

戦争映画という視点で、戦略によるエピソードや、特定の人物などに絞り込んで面白みのある映画を作る事も可能だとは思うのですが、イーストウッドはそれをせず、ただただ戦争という矛盾した中での人間の生き死にから命の尊さを描いた重みのある作品を作り上げた感がありました。
何といっていいのか判らないのですが、確かにイーストウッドの描きたかった物は実を結んでいると思います。^^
ご覧になりましたら、是非感想をば、拝見しに伺いたく思います。
Posted by ラクサナ at 2006年12月12日 18:44
ばんわ〜♪ 感想お待ちしておりました!
作品のクォリティーの高さもですが、私たちにとってはまた別の意味で思い出の作品となりましたよねぇ・・
尾崎さんの熱演は素晴らしかったです。
イーストウッドの反戦へのメッセージは二つの作品で完璧になりましたね!
私も本買いましたよー
電車の中で読もうとしたら、一ページも読まないうちに涙がぼろぼろ出てしまってすぐ止めました!家で読まねばダメだわ・・
Posted by マダムS at 2006年12月12日 23:47
[Em106]マダムSさん

マダム、早速のコメ・トラ有難うございます。
作品のクォリティーの高さは勿論、良い意味で観ていて、実は日本人には目新しさがそんなに無いことということも凄い事だと思いました。
前の星条旗は一つの映画としての戦争からのドラマ、コチラはストレートな戦争の中でのドラマでしたね。
本当にイーストウッドからの手紙は、A作品観て届いた気がしました。
感想は上手く書ききれな〜い!(笑;)

おっと、本は『玉砕指揮官の絵手紙』の方でしょうか?
私はソチラしか読んでいませんが、映画を観る前でも涙があふれました。
栗林中将、本当に素敵な家庭人であり、あの時代の日本の先駆者でもありますよね。

尾崎さんの熱演は、本当に見応えがありました。
Posted by ラクサナ at 2006年12月13日 09:29
お邪魔します☆
これ、感想書くのが難しくて、でも時間をかけた割にはたいしたことが書けませんでした(^^;)
でも私なりに感じたことは、これが事実であること、そして今も硫黄島に眠っている人たちが大勢いるんだ、ということです。
擂鉢山が写ったとき、慰霊碑(あの石版、何ていうのが正しいのでしょうか?) に岸元首相の名前が見えましたけど、これもまぎれもない日本の歴史の一部なんですよね・・・。映画としては記憶に残る作品になりました。尾崎英二郎さん、本当に素晴らしかったです。
Posted by mei at 2006年12月14日 20:04
[Em106]meiさん

私も感想がまとまらずじまいで・・・(^^;
受け取った思いはいっぱいあるはずなんでけど・・・言葉にするのは難しいですよね。
第一部の『星条旗』のラストで聴いた波の音がこの作品の一番始めにも流れ、その後の擂鉢山の慰霊碑を映し出すシーン、確かに安倍首相のおじいちゃんの名がありましたねー。
第一部は、黙して語るアメリカ側の硫黄島。
第二部は、手紙が語る日本側の硫黄島。
どちらも言葉にするのは、苦しみが伴うものだと想いますが・・・

この作品を観て初めて硫黄島の事実を知るのは、私も含めて日本人でも多いはず。
イーストウッドが残してくれたものは大きいですよね。


Posted by ラクサナ at 2006年12月15日 22:49
感想をまとめるのに時間がかかり、ようやくきょうUPしましたのでTBしました。若い人たちのようにまっさらな気持ちで映画に対峙できない私、いつものように、すき放題に書いています。ごめんなすって。
Posted by Bianca at 2006年12月21日 19:58
[Em106]Biancaさん

早速TB有難うございます。
この映画の感想は年代によって違うかもしれませんが、今一度戦争の真実を知ることは年齢に関係なく大事なことですよね。
早速感想を拝見しに伺います!^^
Posted by ラクサナ at 2006年12月22日 15:04
ちょっとご無沙汰でした。
今日はクリスマスイヴでしたが、はや明日へとなる時間にお邪魔しています。
私もやっと遅ればせながら、観賞してきました。
午後の3時半ぐらいからの上映開始だったからか、女子高校生も何人かいました。
きっと二宮君目当てだったのでしょうが、どんな切っ掛けにしろ、この作品を見てもらうのは本当に良いことだと思います。
何しろ、「え?日本がアメリカと戦争したの?マジ?で、どっちが勝ったの?」などという若い者が結構いるそうですから・・・。

ほんと、こちらは「父親たち〜〜」とは違って、時系列に進みストレートに描いてあるので、ストレートに心に染みこんできた感じがしました。また見ている私たちも同じ日本人だからでもあったのでしょうが・・・。
「父親たち〜〜」では日本兵は顔が見えず、不気味な存在と描かれていたけど、「硫黄島〜〜」では、顔を現した、その日本兵が家族を思いやる、非常に人間的に描かれていました。
日本兵からしたら、鬼畜米英と思っていた不気味なアメリカ兵達が、また同じ人間だと理解する。
両作品を見終わってみると、2作品で、すべての監督の意図が伝わってくるので、本当に2作品合わせて一つという感じですね・・・。

昔「トラトラトラ」という真珠湾のときの両方から描いた作品があるそうですが、ラクサナさんはご覧になっていますか?
私はまだですが・・・。

戦後占領軍のプロパガンダにより日本兵は残虐だ・・ということがまかりとおっているようですが、また最近の中国によるプロパガンダもあり、この映画は全世界の人々に是非見て欲しいと思いました。

「絵手紙」も「硫黄島からの手紙」も書店になかったので、ノンフィクション「散るぞ悲しき」を買ってきましたよっ。

Posted by 紫の上 at 2006年12月25日 00:09
わたしは公開初日に見に行ったのですが、先週夫が見てきて、よかったと言ってました。

友人R子ちゃんの弟のA君が自衛隊にいるのですが、昔R子ちゃんから、A君が訓練で硫黄島へ行った時の話を聞いたのですが、夜になると無数の幽霊が滑走路を歩いていたんですって。島からは、何も持って帰ってはいけないことになっているのに、小さい石を持ってきた人がいたんだけど、夜になったら、その石が白く光ったので、あわてて海へ捨てたそうです。
A君は、臆病じゃないし、幽霊とか信じる子じゃないので、やっぱりあそこは特別なのねとか、R子ちゃんと話した記憶があります。
Posted by MACHI at 2006年12月25日 08:12
[Em106]MACHIさん

ひゃ〜〜!
一般の人は入れない島ということからも、いつまでも戦争の傷跡を残す場所になるんだと思いますが・・
でも解りますよね〜あれだけの思いで亡くなった人たちの魂は、簡単には立ち去れないですよね、あの島から・・・。(・人・)
私は初日に旦那と観てきましたが・・・
今、レンタルで太平洋戦争のドキュメンタリー物を観ていますよ。影響受けてますよね。。。(−−;



Posted by ラクサナ at 2006年12月26日 12:46
[Em106]紫の上さん

すいません!
うっかり紫の上さんのコメントを見逃してしまい、今初めて拝見しました。
レスが遅れてしまって本当に申し訳ありませんでした。m(__)m

本当にこの作品、若い世代や他国の人に観て感じて欲しい気がしますね。
日本とアメリカを描いた作品ではあるけれど、戦争という不条理なものに巻き込まれる人間の姿は、国籍や年齢に関係なく同じ人間として重なる思いがあると思います。

『トラ、トラ、トラ!』は、観ています。
確か『パールハーバー』を観た後で、ちっと腹がたってビデオで再見した覚えがあります。(笑;)
パール・・・とは違い、それはもう見応えはありましたが、反戦の意味合いよりも、アメリカ資本の入ったこの作品は、ある意味娯楽作品の戦争映画の感が強い気がしました。
当時話題になった黒沢監督の降板がなければ、また違ったものになっていたかもしれない作品ですよねぇ。

『硫黄島からの手紙』、原作の方は、私は「絵手紙」だけしか読んでいませんが、栗林中将の人となり、本当に現代に通じる良き家庭人で父親であるということ、渡辺謙が演じる映画にもしっかり反映されていたように思いました。
Posted by ラクサナ at 2006年12月28日 23:37
ラクサナさん、こんにちは!
TBさせて頂きました。

玉砕を厳に禁じる司令官の気持ちがなかなか他の将官に伝わらないのが、悲しさを通り越して憤りすら感じました。
戦争がイケナイのか?人間がイケナイのか?何がイケナイのか私には解かりません。
でも、戦争の無い現代が本当に幸せになっているのか?
身を犠牲にしていった多くの先人たちに、とても申し開きの出来ない現代を作ってしまっているようにも自分は感じます。

今後とも宜しくお願い致します。m(__)m
Posted by cocos at 2007年01月06日 14:48
[Em106]cocosさん

TB有難うございました。

本当にこんな悲劇を経験しても“戦争”というものを、未だに世界から消すことのできない現実には、自分の周囲の平穏な日々にも甘んじていていいものなのか疑念の思いを消すことはできないですよね。
戦争映画が本当に過去のものとして娯楽の意味だけで観られる日がくるといいのですが・・・。
それはともかくも・・今年もいろいろな作品で、生きる喜びをたくさん感じて行きたいと思っております。

コチラこそ今後とも宜しくお願い致します!m(__)m
Posted by ラクサナ at 2007年01月07日 01:56
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● 硫黄島からの手紙 ●
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