2007年01月21日

それでもボクはやってない

soredemobokuha.jpg
『Shall We ダンス?』から11年ぶりの周防監督の新作。
法廷劇とは言っても、コレは“痴漢事件”の裁判。

予告観て「やってないんだよ!」っと情けなく叫ぶ『硫黄島からの手紙』でお馴染みになった加瀬亮の姿に、「コレは面白そう!」っと思いましたが・・・
さすがに見応えもあり、人事では済まされない身近な問題だけに・・・
そりゃやっぱり考えさせられるし・・・
147分という長丁場が嘘のように引き込まれて、非常に面白かったるんるん
監督が3年余りの徹底取材を行って作り上げた作品だけに、2年後に始まる市民参加の裁判員制度導入の勉強にもなる一品。

訴える側、訴えられる側、裁く側・・・
どれにも成り得ることに、改めて恐れおののく・・・。


soredemobokuha.jpg-1.jpgその日、フリーターの金子徹平(加瀬亮)は、会社の面接へ向かう為に朝の通勤ラッシュで混雑する電車に乗った。
乗り換えの駅で降りると、ホームで女子中学生に「今、痴漢をしたでしょ」っと声をかけられる。驚く徹平だったが、騒ぎに気づいた駅員に促され、そのまま駅事務室へ向かった。しかし、駅事務室ではろくに話もさせて貰えず、警察官に引き渡されてしまう。
警察署で頭ごなしに怒鳴る刑事に「ボクは何もやってない」と訴えるも、痴漢の現行犯として手錠をかけられ留置されてしまう。罪を認めれば軽く済むと言われるも、一貫して否認し続ける徹平は、警察署、検察庁で取調べを受けるが、自分の主張をまともに聞いてもらえず、ついに起訴されて法廷で争うことになる・・・。



痴漢という行為には、一応私も女性でしたので(あ、今もですぞ! 笑;)満員電車で、映画館の中で、あるいは道端で・・・横断歩道ですれ違いざまにと・・・過去に何度もあったことがありますが・・・・アレは本当に呪い殺したいぐらい頭に来ますよね〜!ちっ(怒った顔)
「スキがあるから・・・」なんて、慰めともとれない言葉をかけられたこともありますが・・・
満員電車の中で、身動き取れない後ろからサワラレたら、それを防ぐことも、ましてやその手を掴むなんてかなり難しいことだと思います。

この映画を観たら、世の男性たちは満員電車に乗る折に、皆ムーンウォーカーのように後ろ向きに乗り込むんじゃないかと想像すると、それもヒヤヒヤしますが・・わーい(嬉しい顔)(笑;)
主人公の陥る不運は、男性なら誰でも起こりうると考えられる訳で、非常に感情移入しやすい。
でも、それが主人公にだけかと言うと・・・勇気を持って訴えた女子中学生に、電車内で近くにいた男性や女性、容疑者に容赦ない刑事もまたしかり・・・明らかに悪意を持って登場する人物は一人もいない。
冤罪をかけられて過酷な状況にある主人公に同情して怒り心頭に達するかと思えば、法廷に冷やかしにくる傍聴人の「本当はやったんじゃないの?」という言葉さえも、実はその状況にあって当然の言葉として取れる気もする。
この辺りの非常に真面目な問題をユーモアも交えて、暗くなりすぎないさじ加減が絶妙。
soredemobokuha-2.jpg「一番大事なことは、無実の人を有罪にしないこと」という最初の裁判官の疑わしきは罰せず仕様の胸のすく言葉もあれば、スンナリ裁判官の交代劇があり、疑心暗鬼の、ソレもまた大事かと思われる小日向裁判官の登場。
どうしたって「ボクはやってない」のであれば、いつかは容疑が晴れると、人間誰しも知らぬうちに「神様は見ている」状態に陥るのもよくわかるのだけど・・・
人が人を裁く司法制度の中、自分のみぞ知ること以外確かなものなど何も無いということを、痛いほど教えられる・・・ふらふら
でもそれがまた、主人公と共にいろいろと勉強させられたコチラを、最後には意外にも爽やかな気持ちにしてくれるのです。


つい最近もある暴行事件で、実の犯人が発覚した為に、5年という歳月無実の罪に問われた男性に、取り返しの付かない冤罪を背負わせたとして警察が謝罪するというニュースを聞きました。その間に病気の父親を亡くし、普通にあるべき人間らしい5年間の生活を拘置所の中で苦悩しなければならなかった、この男性のポッカリ空いてしまった人生の穴は埋めようがありませんよね。真に恨むべきは真犯人かもしれませんが、裁く側への怒りがどうしてもこみ上げる中、「そっとして欲しい」と最後につぶやいたという男性の言葉が忘れられません・・・。

どうしても人が人を裁かなけらばならない司法制度の中で、どのような立場にも成り得る私たちが、終生考えていかなければばらない問題だと深く考えさせられました。
この映画にも、この男性の冤罪事件にも・・・
posted by ラクサナ at 22:42 | Comment(10) | TrackBack(2) | 2007年 1月映画鑑賞作品
この記事へのコメント
『ディパーテッド』は長く感じてしまって(たしかにこれよりも長いんですが)
途中で一度ト○レに立ってしまいました。

これは2時間半があっという間でした。面白かった〜!
考えさせられる作品でしたね。

Posted by さくらこ at 2007年01月24日 10:02
痴漢は、大問題ですよね。昔は一方的に被害者が我慢するだけ、今はまた、
告発されたら事実の有無に関わらず、それっきり罪人扱い。

そもそも、これだけ混雑する電車を許してきたことが、痴漢を生み出す一因だったのでは?
通勤通学者に人間らしい扱いをして来なかった日本の風土にも、又裁判になったら
まず有罪を覚悟せざるをえない刑事裁判のあり方にも、
日本に特有の弱点があるような気がします。

この監督の作品は文句を言いつつ、大部分みていますので、時間が許す限り、
見に行くつもり、とはいえ、今、見たいのが沢山あって・・・・
Posted by Bianca at 2007年01月24日 22:00
[Em88]さくらこさん

ひゃひゃ『ディパーテッド』[Em49]行っちゃいましたか!?(笑;)
私は試写会だったんで我慢しました。。。(爆)

本当にこの作品は、見事に時間を感じませんでしたね。次から次へと成り行きを見守りながらも、あのラストには意外にもスッキリしちゃいましたし。
加瀬君の風貌も絶妙の感がありましたよね。
昔、某サイトで映画館で出くわす痴漢の防御法について熱く(?)語り合ったことを思い出しますね。^^

[Em88]Biancaさん

今は朝の通勤ラッシュの時間帯だけ、女性専用車両になるという対策もありますが・・・
標的にする電車を決めて、女性を囲んで行為に及ぶという、信じられない事をネットで情報交換するサイトがあったりと・・・
昔では考えられないような酷いこともあるようで・・こういう行為はいつの時代になっても無くならないですよね〜。
冤罪もまた然り・・・。
いろんな意味で周防監督のこの作品は、面白かったですよ!^^
Posted by ラクサナ at 2007年01月25日 17:42
監督のトークショー付きの試写会で見ました。ブログには、写真を貼ってます。
是非、多くの人に見てもらいたい映画ですよね。

女性も、痴漢かどうか迷うんですよね。よほど確信がないと、我慢しちゃうしね。あっても、我慢しちゃう人もいるし。
わたしは、「この人痴漢です!」と叫んだことはないですね。しらばっくれられたら、それまでだし。最近は、ケイタイで、証拠写真を撮る女性もいるそうですけど。
これは確実と思っても、なかなか身動きできない超満員電車。 グラっと電車が揺れた瞬間少し隙間ができ、痴漢(と思われる)の手の甲を思いっきり引掻いた事と、胸倉に思いっきり肘鉄をくらわせた事があります!
Posted by MACHI at 2007年01月26日 12:50
いや〜色々考えさせられる作品でした!
冤罪ほど悔しいものはないでしょうー。
本当に長時間があっという間に感じられたほど夢中で成り行きを見守ってしまいましたが・・小日向裁判官にはすっかりやられましたよねぇ・・普段良い人役が多いから最後はもちろん・・なんて甘かった(^^;)
Posted by マダムS at 2007年01月27日 19:13
人事ではない切実さがありますよね。
当然無罪だと思ってみてるものだから、
だんだん切実になってくる恐怖が、
もういても立ってもいられないくらいです。

面接の日に「履歴書」忘れるくらいの
ボンヤリ加減が、自分の息子とダブって
もたいまさこの母親に、自分をだぶらせ
てしまいました(^^;
この状況をみてみると、今後導入されると言う
「陪審員制」も、いいのじゃないかと
おもってしまいます。
Posted by キウイ at 2007年01月28日 23:41
こんばんはー。
とてもおもしろい映画でした。
見ている間は恐怖感と悔しさでいっぱいでしたが、勉強になったし満足度は高いです。
11年ぶりでも冴えてますねー。
あ、私も道ばたの痴漢にあったことあります。遊歩道で追い越しざまにぐわっと・・・。
ホント、呪い殺したいです(笑)
Posted by かえる at 2007年01月29日 00:34
[Em88]MACHIさん

ひゃ〜遅ればせながら先ほど伺ってロムさせて頂きました!
監督のトークショー付きの試写会、画像の方も拝見させて貰いました。(羨)
周防監督のこの作品に費やした時間にも確かなものを感じますよね。

そう、痴漢って最初は微妙で、判断付きにくいんですよね。
そういえば、地下鉄で“見せる”痴漢にあったこともありましたが、思わず「きったね〜な、ばぁっか!」って声が出ちゃいましたわ。(笑;)
お〜引っ掻きと、胸倉に肘鉄!は良さそうですね〜!
手を掴むって・・・触るだけでも嫌ですもんね!(^^;

ではでは、ブログの方へコメントさせて貰いに伺います〜〜♪

[Em88]マダムSさん

本当に考えさせられましたよね〜。
今までも冤罪を扱った作品を何回も観て、最後には・・・っという思いがありましたが、
現実は厳しいですね。
裁判というものも、二度ほど傍聴する機会があったんですが、何だか何も知らない自分がソコに居る事が、人の人生に立ち入るような気がして後ろめたいような妙な気分になった覚えがあります。
こういった、ある意味身近な罪状での裁判が、実は一番難しいんだという事も改めて教えられた気がしますよね。

[Em88]キウイさん

ウチは娘ばかりなので、ある意味客観的に観られた気もするんですが・・・・
息子さんがいらっしゃったら、また観る目も違うかもしれませんよね。
でも、この映画の元になったのは妻子もある方らしいので、そういう意味では、やはり本当に人事とは思えません。
もたいまさこさん、『かもめ食堂』に続いて、また好演されてましたね〜。
『硫黄島・・』とこの作品で、すっかりお馴染みになった加瀬亮クンなんですけど、『パッチギ』では、オックスのヒデト役で「ダンシング・セヴンティーン」歌ってたんですね〜もう驚きでっす!(^_^.)

[Em88]かえるさん

全く長い時間が気になりませんでしたね〜!
周防監督は、こういった冤罪の実態に憤怒しての映画製作と聞きましたが、いやなかなか冷静で、どの立場からも観ても焦点がズレていない内容、さすがだと思いました。
それはそうと、最近ソチラにお邪魔して何度も試しているのですが・・・TBの方が何だかうまくいかず、申し訳ありません。これって『西瓜』からの不具合なんでしょうか・・。(笑)
あ、やっぱり道場端の痴漢、そうです〜そんな感じで、驚いて振り向いた瞬間のソイツは、ニヤリと笑ってました。
私の中では・・・その顔は、その瞬間に血しぶきをあげて真っ二つです!(爆;)


Posted by ラクサナ at 2007年01月29日 23:22
>真面目な問題をユーモアも交えて、暗くなりすぎないさじ加減が絶妙。

正にこの通りで、緊張度も時々緩和されて、
時間の長さを感じさせられなかったですねっ。
実に見応えがあると共に、どんぴしゃり時代にあったテーマ性を持っていました。
また、最近やけに現実にわいせつ犯罪が多い上の関係者達に「またかぁ〜!」という思いがある意味有罪の方へ進んで行くような事がなきにしもあらずかな?とちょこっと思いました。

全く、息子は履歴書どころか、入試に受験票を忘れて会場に行ってしまう情けなさ。
すっかり加瀬君の顔に息子の顔をオーバーラップ。人ごとに思えません〜(^^;
Posted by 紫の上 at 2007年01月30日 00:32
[Em88]紫の上さん

そうですよね〜某大学教授の盗撮なんかも、何だかニュース通りに受け取っていいものかどうか?
こういう犯罪を繰り返す人間は、有罪は勿論、直しようの無い病気というレッテルがはられてしまいますもんね。

ひゃ〜受験票!?
でも、慌てなければ加瀬君のようにはならないはず・・・ですよね、きっと!(^^;
やっぱり、満員電車に押し込む駅員や、そういう態勢にある電車会社側にも責任の一端はありますよね。
Posted by ラクサナ at 2007年01月30日 01:04
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『それでもボクはやってない』
Excerpt: 「Shall we ダンス?」以来なんと11年ぶりの新作!? だったんですねぇ・・周防監督。 観終わってみれば2時間23分という長い上映時間だったにも関わらず、手に汗握り、夢中で主人公の青年の行く末..
Weblog: Brilliant Days
Tracked: 2007-01-27 19:14

「それでもボクはやってない」試写会レビュー 運命
Excerpt: すごいリアルに作りこまれた映画やとは思うけど、やっぱり邦画バブルの中ではその魅力はだいぶ、、、。
Weblog: 長江将史〜てれすどん2号 まだ見ぬ未来へ
Tracked: 2007-01-30 00:56
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