2007年03月09日

ニキフォル 知られざる天才画家の肖像 

NIKIFOR.-1.jpg
ポーランドでアール・ブリュットやアウトサイダー・アートの天才画家と評価されるニキフォルと、その晩年を支えた1人の画家の実話からの映画化。アート

サブタイトルに“知られざる”とある通り、ニキフォルという画家を知る人は少ないのだろう。
かく言う私も全然知りませんでした。
この作品で、ニキフォル爺ちゃんを演じるのが、何とクリスティーナ・フェルドマンというポーランドのベテラン女優。
メイクのせいもありますが、ご本人にそっくり!
そして、偏屈でありながら放浪の画家としての心の自由を持った愛すべきニキフォルを見事に演じていました。


1960年、ポーランド南部の保養地クリニツァ。
ある日役所の管理部の美術担当マリアン・ヴォシンスキ(ロマン・ガナルチック)のアトリエに、ふとやってきた小柄な老人ニキフォル(クリスティーナ・フェルドマン)。
彼はそこに当然のように居座って絵を描き始めてしまう。
身よりも無く、言語障害のためか、その偏狭な性格からか、人とウマく話すことができず、読み書きもできないニキフォルは、ただひたすら絵を描き続け・・・町へ訪れる観光客に絵を売って僅かな収入を得ていた。
そんなニキフォルにアトリエを占領され、困り果てるマリアンだったが、身よりのない彼を放っておけず、仕事で家族を連れ他の街へ転居する計画も後送りにして面倒を見始める。
だがニキフォルは重い結核を患っていて、平和だったマリアンの家庭には亀裂が生じてしまう…。


NIKIFOR.jpg最初はどうしても、ニキフォルという爺ちゃんを、高齢とはいえ女優が演じるという部分を興味深く観てしまうのですが、始まってすぐにそんなことは全然気にならなくなりました。
風体も本当に良く似せていますが・・・むしろニキフォルという、ある意味傲慢で特異な存在の画家に、彼女の演技が命を与えた感さえあります。

言語障害か聾唖であったかもしれないニキフォルの台詞は少ないのですが、あえて障害者のような不明瞭な台詞ではなく、所々ガツンとつぶやくその台詞は、聞くに堪えないマリアンの芸術性を否定するようなものが多いのですが・・・どこか憎めない。
薄汚く我侭で結核を患って苦しむニキフォルが、何故か精霊のように高潔に見えてしまうのも、彼女の演技の凄さ、彼女をキャスティングした妙だと思います。

そんなこの作品は、ニキフォルを描きながらも、ニキフォルに出会ってしまったもう1人のマリアンという画家の物語でもあります。
決して最初からニキフォルを崇め肯定していた訳ではないマリアンが、家庭をないがしろにしてもニキフォルに尽くすことになる。
そんな過程が面々と綴られるのですが、それが極自然で・・・
特別なマリアンの決意を示すシーンも無いけれど、出あった時から同じ画家としての運命の細い糸がピンっと一本張った思いがそこはかとなくあるんですよね。
マリアンを演じるロマン・ガナルチックという優しい目をした俳優の演技も見事。
人助けなどという定規では測れない、同じ芸術を創造する者としての繋がり・・・。
欲や見えや全ての邪魔な物を脱いで、本来あるべき姿の日常の全てを絵を描くことに捧げているニキフォルは、同じ芸術家としてそれができないマリアンにとって畏敬の存在でもあり、彼の面倒を見ることは、マリアンにとって芸術を生み出すことと同じ意味があった気さえします。もうやだ〜(悲しい顔)

NIKIFOR.-2.jpg

こういった画家を描く作品は、また映像の構図が素晴らしいですよね。
クリニツァの四季は素晴らしく・・・
ニキフォルが街中で独り画板を開いてたたずむシーン。
雪の中をマリアンの赤い車が走るシーン。
ニキフォルとマリアンが手を繋いで歩いていく後姿。
本当に絵画のように美しい。ぴかぴか(新しい)

そして・・・
ラジオから流れる賑やかな音楽が大好きなニキフォルがマリアンに「天国にラジオはあるのかな?」っと問うシーン。
2人の暖かさが伝わる・・・。もうやだ〜(悲しい顔)

NIKIFOR.-4.jpg  NIKIFOR.-5.jpg

ラストに流されるニキフォルの絵画の数々・・・。
ニキフォルという画家を知ったこと。
マリアンという画家を知ったこと。
本当に心に残る作品でした。


そして見事にニキフォルを演じたクリスティーナ・フェルドマン。
彼女は、残念なことに今年の1月24日亡くなられたそうです。
ご冥福をお祈り致します。

NIKIFOR.-3.jpg


posted by ラクサナ at 23:03 | Comment(2) | TrackBack(0) | 2007年 3月映画鑑賞作品
この記事へのコメント
基本的に女性が男性を演じるのは好きじゃないんです。ただ、老人と幼児の場合は例外です。もともと、ホルモン分泌上、性別があらわれないような年齢層ですからね。この映画はその例外に当るのでしょうか。
あ、ゴメンなさい、ラクサナさん、ミリタリールックでザ・タイガースの真似をしたことがあったんですね、それはきっと、とても可愛らしくて、似合ってたと思いますよ。
Posted by Bianca at 2007年03月17日 13:06
[Em62]Biancaさん

私も特に宝塚とか苦手の部類です。(^^;

>ホルモン分泌上、性別があらわれないような年齢層・・・

その特性も十分配慮してのキャスティングだとは思いますが・・・
やはりクリスティーナ・フェルドマンという女優のソレ以上の演技の部分を大きく評価したい作品です。
この作品の彼女は、声も仕草もニキフォル以外の何者でもない存在感がありました。

あはっ、ミリタリールックのザ・タイガース、(*^。^*)11歳ぐらいの時でしたので、例外の内としてご勘弁願いたいと思います。(笑;)
Posted by ラクサナ at 2007年03月19日 09:40
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