2007年03月28日

善き人のためのソナタ

DAS LEBEN DER ANDEREN.jpg1984年、壁崩壊前の東ベルリンを舞台に、反体制派の監視を行っていた秘密警察“シュタージ”の1人のエージェントを主人公にしながら、何ともヒューマンな感動を呼ぶ、アカデミー賞の外国語映画賞受賞も納得の面白い作品でした。

主演は自らも監視された経験を持つ東ドイツ出身のウルリッヒ・ミューエ。
監督はまだ33歳で、この作品が長編デビューのフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク(名前も長い 汗;)、驚きです。がく〜(落胆した顔)

ベルリンの壁崩壊を目にする人々を描いた作品も数あれど・・・
こういった主人公のような過去を胸に抱きながら・・・
崩壊の日を迎える胸の内はいくばくか・・・ラストも秀逸でした。ぴかぴか(新しい)


1984年、壁崩壊前の東ベルリン。
国家保安省(シュタージ)のベテランエージェントであるヴィスラー(ウルリッヒ・ミューエ)は、反体制的疑いがあるとして劇作家ドライマン(セバスチャン・コッホ)とその恋人である舞台女優クリスタ(マルティナ・ゲデック)を監視し、反体制の証拠を掴むよう命じられる。早速ドライマンの部屋に盗聴器が仕掛けられ、ヴィスラーは同じアパートの屋根裏部屋で徹底した監視を開始するが・・・厳しい情勢の中で、演劇や文学について真摯に語り合い、お互いを愛情深く思いあうドライマンとクリスタに、そしてドライマンが弾くピアノでの“善き人のためのソナタ”に、知らず知らずのうちに惹かれていくヴィスラーだったが・・・。


DAS LEBEN DER ANDEREN-1.JPG


ヴィスラー演じるウルリッヒ・ミューエは全編顔色ひとつ変えず、冷酷なシュタージのエージェントの体から、ドライマンたちに惹かれていく、寂しく愛情に弱い心優しい男になるまでの過程を、本当に見事に演じている。
それに加え、ヴィスラーを取り巻くシュタージの上層部の人間達、相反してドライマンやクリスタを取り巻く演劇関係の人間たちも、政治的な背景を舞台にしながらも、生身の人間の性格を露呈しているのが非常に面白い。

意外だったのは・・・
“善き人のソナタ”をヴィスラーが聴いて心打たれるシーンは、『戦場のピアニスト』のラストのショパンの感動シーンのような物を連想していたのだけど、案外コレがあっさりめexclamation&question
曲もガブリエル・ヤレド作曲のものらしいけど、もう既に記憶にありまへんがな。。。ふらふら私だけ?
しかして簡単にヴィスラーはあっさりご改心exclamation&question
いえいえ・・・これがまた細かいヴィスラーの描写で、納得がいくんですね。
大袈裟な演出はないけれど・・・一番の要因はソナタよりも、やはりドライマンとクリスタの深い愛情では無かったかと思います。
そう、このソナタは“善き人にする・・”では無くて・・・“善き人のための・・・”ものなのであります。
このヴィスラーを見ていると“人はいつでも善き人に変われる”ではなくて“人の根本はいつでも善き人なのだから・・”そんな思いがしました。

そんな訳で、この作品はヴィスラーが2人に惹かれてからの、孤軍奮闘する展開が又非常に面白く見応えがあるんですね。
ドライマンを演じるセバスチャン・コッホが又なかなかに魅力的だし、彼を愛するクリスタを演じるマルティナ・ゲデックも素晴らしい。

DAS LEBEN DER ANDEREN-2.JPG


ベルリン崩壊前と、その後のドライマン演出の舞台の違いなども興味深いし・・・
壁崩壊の時に、こんなひとつの人生もあったなんて・・・
本当に最後の最後に垣間見せる・・ヴィスラーの誇り高き表情がたまりません。もうやだ〜(悲しい顔)


盗聴という人間性を無視して人を監視するシステムに、何よりも大事な人の人間性を教えられるという・・・
何とも本当に素晴らしい作品でした。ぴかぴか(新しい)
posted by ラクサナ at 14:13 | Comment(4) | TrackBack(5) | 2007年 3月映画鑑賞作品
この記事へのコメント
ワーイ、ご覧になったのですね。
見た人がたいていみな「善き人」になって感想をしたためている・・・こういう感想はいつ、どこで読んでも、いいものです。そう、私も音楽にはさほど感じませんでした。あの二人と、詩ですよね。それと、やはりドイツ人の民度の高さを感じました。
Posted by Bianca at 2007年04月02日 23:59
[Em70]Biancaさん

そうでしたね〜あの2人の愛情と詩・・。
実は冒頭、ヴィスラーの鉄壁なまでのシュタージのエージェントとしての有様を見せ付けられた割には、何でこうも簡単にドライマン側の人間になってしまったのか、ちっと拍子抜けした私で、映画としてはその部分だけが今でもちょっと引っかかるのですが・・・
何にも増して個々の人物描写が素晴らしくて、その辺りも納得してしまった私です。(^^;
文学や芸術を求める感性は、やはり根本に愛情を求める人の心の奥深い部分と繋がるのでしょうか・・・
本当に素晴らしい作品でしたね。
Posted by ラクサナ at 2007年04月03日 12:11
私ももっとソナタが流れるのかな?と思っていたけど、以外やあっさり目でしたねぇ〜。
で、皆さんが言われているように、あの2人の愛情と詩ですか・・・。
人間の尊厳を卑しめる盗聴という仕事をしながら、人間性に目覚め、その影響を受けた人の尊厳を守り、それによって、ラストに自分も人間としての尊厳を得る。
そんな物語は本当に秀逸な作品にできあがっていました。
Posted by 紫の上 at 2007年04月04日 20:28
[Em70]紫の上さん

ソナタ・・・紫の上さんも、そう思われました!?
本当にこういった作品を観ると、人間って棄てたもんじゃないって思わされて、どんな過酷な状況でも人と人との繋がりはあるんだな〜っと思わされますよね。
監視されていたセバスチャン・コッホ、マルティナ・ゲデックの演技も素晴らしかったですよね。
ドライマンが全てを知ったとき、直接ヴィスラーにかけよるのではなく、一冊の本に思いを託すなど本当に心憎いまでの感動を最後の最後まで与えてくれる作品でしたね。
Posted by ラクサナ at 2007年04月05日 01:06
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〔映画〕善き人のためのソナタ
Excerpt: 2006年 ドイツ 138分 鑑賞 07年3月7日@シネリーブル梅田  監督&脚本 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク 主演 ウルリッヒ・ミューエ 原題 Das Leben der Ande..
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