『トータルリコール』や『氷の微笑』『インビジブル』等のヴァーホーヴェンがオランダの人だったってことを、この作品で初めて知った気がしますが・・・

母国での事実を扱った作品だし、予告から漂う、二重スパイという過酷な運命に弄ばれるヒロインの哀しくも愁傷なメロドラマ風味なのかと思ったら・・・
サスペンス色の強いスピード感のある見事な娯楽作品。

やっぱりヴァーホーヴェンですね〜ボカシが入る程のエゲツナイ描写もあり、でもそれが嫌らしくもなく、非常に見応えがあり、何か手塚治虫の作品を観ている(読んでいる)ような面白さがありましたね〜

1965年10月、イスラエルのキブツと呼ばれる共同村で暮らすラヘル・シュタイン(カリス・ファン・ハウテン)は、観光客として来た1人の女性と再開し、自らの過去を回想する・・・。
1944年9月、ナチス・ドイツの占領下のオランダで、ユダヤ人のラヘルは、エリスと名を変えて農家に匿われて生活していたが・・・ドイツ軍から逃れるため、別に暮らしていた家族と一緒に南部へ逃れようとする。
しかし、ドイツ軍の執拗な追跡に遭い、同じように逃亡するユダヤ人たちとラヘルの家族は皆殺しにされてしまう。
1人逃げ延びたラヘルはレジスタンスに参加、髪もブロンドに染め、ナチスの情報を得るため将校であるムンツェ(セバスチャン・コッホ)に接近し、彼の愛人となりナチス本部に潜入するのだが・・・。
主人公のラヘルを演じるカリス・ファン・ハウンテンが良いですね〜。
この人、静止している写真で見るより動いている方がうんと美しい。

家族を皆殺しにされても次の瞬間に、もうレジスタンスとして毅然と全てをふっきり活動する彼女。
前半から目まぐるしい展開の中、もうヒーローのような活躍ぶり。

キブツで暮らす顔とは違い、戦争という状況の中で、どんな時でも睫毛バッチリアイメイクの化粧顔で、そんなところも手塚作品の女性のお目目を思い出してしまうのですが・・・・ストーリー展開の面白さもまさに手塚作品を思い出しニンマリしながら鑑賞。


そんな中で、こんな過酷な物語なのに、時にユーモアなシーンもあって・・・彼女を中心に実にサスペンスフルな展開になっていく物語は、本当に全編スクリーンから目が離せませんでした。
心底ナチを憎みながらも、人を1人の人間として見た時に、ムンツェに愛を感じる彼女の気持ちが判る。
それ故に翻弄されとんでもない立場に追い込まれるけれど、戦争という状況下で一番大事なものを知った時、また相反して1人の人間のエゴイスティックな裏切りを知ることになるのも辛い。
決して泣くことができない彼女の涙を、中盤まで溜め込んで見せるシーンもお見事。
同じオランダ人としての立場でありながら、敵味方なく、ちゃんと戦争の中における人間の本質を描き出すヴァーホーベンに本当に魅せられました。
そして一見すると、とてつもなく娯楽作品でありながらも、観る者の心に一抹の不安と一石を投じるあのラスト。
キブツというコミュニティの存在も、この作品を観て初めて知りましたが・・・・
戦争という怪物は、未だにユダヤの民である彼女を開放することはないのだというラストにこそ、ヴァーホーベンのメッセージがこめられている気がして唸らせられるし、正直ショックでもありました。

しかし・・・涙展開を予測させる予告編の雰囲気は、この作品とは全然違う気がするなぁ。

今年観た中では、今のところコレは一番面白い作品

ヴァーホーベン万歳〜


ラブストーリーでもあり、社会派の要素ももっていながら、エンタメでもあって、
面白い作品にできあがっていましたねぇ〜!
さすがハリウッドで鍛えた監督の腕が冴えていたけど、また故郷に戻っての、本領発揮といったところでしょうか?
で、カリス演じるヒロインはコケテッシュでもありながら、強い意志を持ち、状況判断の素早さにはほんとヒーローのようでした。
バーホーヴェン監督の新しい女神の誕生ですよねっ!
でも結構ヒロインをいじめていたようにも思えました。あのオランダ人の彼女へ汚物をかけるシーンには思わず目を背けてしまったです。それからあのシーンには目が点!
ぎくりとしましたです。あ、あ、あそこまで表現して良いのかしら・・・と。
お返事おくれまして・・もうご覧になってるかな?^^
チラシ等で見たヒロイン役のカリス嬢は、美人だけど生気がない感じを受けたのですが・・・どうしてどうして、スクリーン狭しと動き回る姿は非常に魅力的でした。
ドイツの将校役で『善き人のためのソナタ』のセバスチャン・コッホも出てますので是非!^^
[Em70]紫の上さん
本当に面白い作品でしたね!
そうそう、なかなか大変なシーンも満載で・・!(^^;
独軍に依存していた女性が戦後髪を切られるシーンは『マレーナ』でもこの作品でも見られましたが・・・ヴォーホーベンは、ヒロインに別の手法を考えましたよね〜きついシーンでした。(><)
>それからあのシーンには目が点!
あれ、あのシーンですよね〜!?(^^;
本当に驚きましたが・・平然とやってのけるヒロインの姿には、何の嫌らしさも感じられないのが又凄いなと思いました。
他に見たくないようなボカシのシーンもありましたが・・・どれも必然性を感じるのがヴァンホーベンの真骨頂なんでしょうね〜本当にお見事でした!
面白かったですよね〜ほんと。
ちょっとエロティックなシーンもいやらしく見えないのが不思議ですよね、女優さんの好感度が良いせいかも。
セバスチャン・コッホ、観て参りました。^^
でも全編ヒロインのカリスさんに釘付けの作品でしたねぇ。
コッホさん始め脇の俳優のしっかりした演技も面白さの要因かと思いますが・・・。
ヴァンホーベン監督、持ち味をしっかり出し切って本当に見事でした。
しかし、このコッホさん見ていると・・・誰かに似ている気がして・・・思い出せないんですが・・(^^;やっぱ“善き人・・”の彼の方が魅力的でしたね。☆
そうそう手塚作品の『アドルフに告ぐ』なんかも、映画化されないもんかと(かなりの大作になりそうですが・・^^;)思います〜!