2007年06月05日

ツォツィ

TSOTSI.JPG2006年、アフリカ映画では初のアカデミー外国語映画賞に輝いた、南アフリカのギャヴィン・フッド監督が撮った南アを舞台にした作品。

世界で一番生活水準の格差が激しいアフリカ。
その犯罪と貧困の蔓延る中、愛情も安らぎも無い世界で産まれ生きる子ども達。

そんなリアリティ溢れる赤茶けてくすんだ映像とクールな音楽が流れる中に・・・
息を止めて見つめる例えようもなく美しい瞬間・・・
ツォツィを演じるプレスリー・チュエニヤハエの表情の一つ一つに、今までに無い感動を覚える・・・。ぴかぴか(新しい)



南アフリカのヨハネスブルグ。
アパルトヘイトの爪跡が今も強く残る旧黒人移住区ソウェトのスラム街に、
“不良・悪党”という意味のスラングである“ツォツィ”(プレスリー・チュエニヤハエ )と呼ばれる19歳の青年がいた。
彼の本名は誰も知らないが・・・彼は仲間とつるみ暴力や窃盗を繰り返し、その日も電車内で一人の老人を餌食にしてしまった。
その事から仲間の一人ボストン(モツスィ・マッハーノ)と口論になったツォツィは、彼を殴打し外へ飛び出す。
路上を彷徨った彼は、BMWを家の前に駐車した女性に目をつけ、銃で脅し車を盗もうとする。
執拗に追ってきた女性に銃弾をあびせ、そのまま盗んだ車で逃走するツォツィだが・・・・
その後部座席からふいに赤ん坊の泣き声がする。
金品を持ち出し、一度は車中に赤ん坊を置き去ろうとする彼だが・・・
泣き叫ぶ赤ん坊を何故か捨て置くことができず、抱き上げて連れ去る。
その日から赤ん坊とツォツィの暮らしが始まるのだったが・・・。


TSOTSI.-1.JPG


冒頭から南アのストリートミュージックの定番であるラップ調の“クワイト”と呼ばれるサウンドが耳に飛び込んで・・・
ヨハネスブルグの駅から、ツォツィたちが目をつけた老人の命がいとも簡単に奪われるまでのシーンの残酷な躍動感に寒気がする。ふらふら

TSOTSI.-2.jpgヨハネスブルグは近代的な高層ビルが立ち並んだ都会であるが、アパルトヘイト廃止以降一部の富裕層を除き、職を求めてなだれ込んだ黒人たちの一部が犯罪者へと変わりひしめき合う“世界一治安の悪い犯罪都市”と称され、南アの中でも危険性は突出している街。
ツォツィたちが暮らすその都市のスラム街は、砂埃のまう赤茶けた世界。
身寄りの無い子ども達が土管を家にしている。
この光景も忘れられない。。。


TSOTSI.-3.jpgそんな赤茶けた世界に染まってしまったかのように乾いて眼光鋭いツォツィの瞳。
犯した罪の意識さえない無い仲間たちの中に一人、人間の“品格”を問うボストンという青年に対し、意味もわからず激高するツォツィの瞳。むかっ(怒り)
そんなツォツィが無垢な赤ん坊と対峙した時に見せる戸惑いの瞳。
全編多くを語らないツォツィだけれど、赤ん坊と出会ってから確実に変化を遂げていく彼の瞳、その表情の変化は本当に素晴らしく・・・ぴかぴか(新しい)

TSOTSI.-4.jpg冒頭のボストンの言葉も理解できなかった彼が、その後逢う人々から確実に影響を受けていくシーンが秀逸。
シングルマザーのミリアムという女性が赤ん坊に母乳を与えてくれる姿を見て、初めて母親が子に注ぐ愛の姿に触れ時のツォツィの瞳の柔らかさは本当に心に沁みいる思いがした。
そして、過去に足を失い駅で物乞いをする老人の生きる姿勢の気高さに感じ入り、自らの生い立ちから、自分が辿った道を振り返り、人間としての感情と気品を取り戻していく。

生というものは望まぬとも与えられるものだけれど、その意義を見出すことは当たり前のようで、生まれながらに見失った者が過酷な状況の中でそれを知るのは非常に難しい。
この物語の主人公はツォツィだけれど、アフリカという国の虐げられた世界に生きる子ども達の誰もが主人公だと思わせるリアリティがある。
物語に出てくる人々は、全てアフリカの黒人であるし、裕福な階級に位置する赤ん坊の家族もまた同じ肌の色で・・・
終盤にツォツィと対面する、赤ん坊の父親。彼がツォツィを見つめる瞳も又、子どもを誘拐した犯人に向けるモノだけではない気がする。
ストーリーはごくシンプルながら、これほどまでの躍動感と、多くを語らぬ静寂感にあふれる画面の中で、まさに都市ではなく都死と呼ぶに相応しいアフリカの現実と、人の心の変化を映し出して・・・・・余計な描写をそぎ落としたラストに生きる希望である一筋の光と痛烈な余韻を残す作品は、これまで見たこと感じたことのない気がした。
その中には遠い国の出来事として傍観できないものがある気もする。


2010年にワールドカップ開催が予定されているヨハネスブルグ。
その為に都市開発が進み、企業や富裕層も都市中心部にまた帰りつつあると言われるヨハネスブルグだけれど、単にインフラの問題だけでは解決できない多数の問題はどうなっていくのか・・・・「ツォツィ」に見た一筋の光をどうやってこの国に注いでいくのか・・・同じ人間としてい生きるものの、とてつもなく大きな課題だと思う。


posted by ラクサナ at 20:18 | Comment(2) | TrackBack(2) | 2007年 6月映画鑑賞作品
この記事へのコメント
こんにちはん。
シンプルながら、力強い作品でしたねぇー。
あの赤ちゃんのおうち、とってもお金持ちでビックリ。
ああいう富裕層が、末端の人たちにも目を向けてくれたらいいのですけどね・・・。
そんなことを言ったら、日本も状況はそんなにかわらないかしら・・・
いえ、とりあえず、土管に住む子どもは保護してくださーい。
Posted by かえる at 2007年06月15日 17:50
[Em150]かえるさん

いや〜本当にシンプルながら、インパクトの強い作品でしたね。
同じアフリカ人として同じ肌を持った富裕層のパパ。なにがしらの憐憫を感じさせる目をしていたと思う・・・思いたいラストでした。
土管に住む子ども達のシーンは、何故か「イノセント・ボイス〜12歳の戦場〜」の屋根の上の少年たちを思い出してしまう光景でした。
とてつもなく哀しい中に、それでも生きている美しさを感じるんですよね。
ホント、何とかして欲しいし、何とかしなくちゃいけませんよね〜!
Posted by ラクサナ at 2007年06月18日 18:25
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『ツォツィ』 Tsotsi
Excerpt: 野獣のような鋭い眼光が和らぐ時。 ハラハラと心が痛み、そしてあふれんばかりの感動が訪れる。 南アフリカ、ヨハネブルグのタウンシップ(旧黒人居住区)ソウェトのスラム街に、本名を隠して"ツォツィ"..
Weblog: かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
Tracked: 2007-06-15 17:41

『ツォツィ』
Excerpt: JUGEMテーマ:映画 制作年:2005年  制作国:南アフリカ・イギリス  上映メディア:劇場公開  上映時間:95分  原題:TSOTSI  配給:アルバトロス  監督:ギャビン・フッ..
Weblog: La.La.La
Tracked: 2007-11-19 14:57
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